2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

研修生レポート② 「ネイバーフッド・アソシエーションに見た彼らの豊かさ」

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調査期間:2011年7月30日(土)~8月7日(日)
文責:京都府南山城村 森本健次(研修生)

オレゴン州ポートランドを訪問した研修生の声をご紹介します。現地でのプログラム内容についてはこちらをご覧ください。

ネイバーフッド・アソシエーションに見た彼らの豊かさ

morimoto.JPG ポートランドの住民主体のまちづくりのキーになっているのがネイバーフッド・アソシエーション(以下、「NA」)の存在だ。米国オレゴン州ポートランド市には、95のNAが存在し、それぞれの地域が抱える課題解決に取り組んでいる。NAは日本の自治会・町内会的なイメージだが、同じものと考えると本質を見誤る。いまや地縁や名誉職として組織されることが多い日本の自治会に対し、NAは地域の共通の関心や課題解消といった具体的な目的のために存在する。

本研修は現場訪問や当事者たちとの現場での意見交換を中心に組み立てられており、その一環で実際のNAでの話し合いを傍聴した。本稿では、NAでどんな話がされているのかを皆さんと共有したい。

私が訪れたNAのミーティングはSWNI(South West Neighbors, Inc.)というポートランド南西部地区における各NAの公園事業担当責任者の会合であった。ミーティングは、市民が参加しやすい時間や場所が工夫されている。夏のポートランドは21時頃まで明るく、この会合は同地区の公園のベンチを利用して行われた。参加者は10名ほどで、性別、年齢もまちまちだが、各地区の責任者ということもあって年配が多い。

行政担当者から市の取組みの報告から始まり、腐食してしまった金属モニュメントの処置等、公園に関わるあらゆる事柄について、熱心な議論が行われる。
行政担当者の報告の後は、担当者を交えた意見交換となり、最近、火事で燃えてしまったトイレの改修に関する要望など、具体的な意見が行政に寄せられた。もちろん、予算の制約等を考えれば、すぐにできるものではないだろうが、行政担当者は丁寧な説明を心がけており、市の情報提供・意見集約の場としてだけでなく、その課題を市民と共有するための場にもなっている。

自由討議の時間になって、一番若いと思われる男性から、他の参加者に相談があった。公園内にあるコミュニティガーデン(市民農園のようなもの)の整備について、反対派がいて、必ずしも多数派を形成するとは思えないが、その対応に苦慮しているという。彼らを排除した会合を考えているともいう。
周囲は、彼の悩みを共有し、自らの経験を踏まえた意見を多数出した。基本的には、反対派の意見を無視し、退けるのではなく、常に前向きに接することが重要と伝えていた。反対意見にきちんと耳を傾ける、彼らに正しい情報を伝える、反対者とどのような点で折り合えるのか改善例の検討等を示した。
周囲の励ましと具体的な事例紹介により、相談した彼も、アドバイスに従い反対派と向き合っていくことを決心したようだ。

ミーティングに参加した彼らは、報酬はもちろん、権限も予算も与えられていない。しかし、彼らの議論は、地域をより良くするにはどうすべきか、その一点に集約した真摯なものだ。
日本の行政と地域住民との関係という枠組みから見ると、「彼らはなぜそこまでやれるのか?」、「その動機は何なのか?」という疑問が沸く。そこで、彼らに質問したら、どう答えるだろうかとその場で考えてみた。きっと彼らは「なぜ日本ではやらないのか?」と答えるに違いない。それほどに迷いがない。

ミーティング後に、一人の男性が、自分達が公園に植えた木々を得意気に説明してくれた。その姿に彼らの誇り「自分たちの地域のことは自分たちで考え、作っていく」を感じた。その誇りと行動こそが、彼らの豊かさなのだ。ポートランドでは、公(public)、みんなのことを住民自身が担っている。行政はその担い手を構成する一員にすぎない。そのことを体感できた現場訪問であった。

以前は、日本でもこうした誇りと行動はあった。省みれば、行政マンとして、住民の誇りと行動を蔑ろにしてきたのかもしれない。私自身、ポートランドの行政職員がそうしているように、住民と共に考え、作っていく、その難しさと楽しさに真正面からぶつかっていきたいと思う。

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研修生レポート① 「公(Public)という庭の志高き庭師を目指して」
研修生レポート③「ポートランドが生み出す住民主体のまちづくり」
「公共を担うのは誰なのか~ポートランドを訪れ、日本の自治を考える」 冨田清行(東京財団 政策研究事業ディレクター兼研究員)