2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

2012年度国外調査(ポートランド研修)

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調査期間:2012年8月25日(土)~9月2日(日)
文責:週末学校事務局 稲垣亜希子

国外調査の目的

東京財団は2004年より自治体職員向け人材育成プログラムを実施しており、ポートランド州立大学(Portland State University:PSU)とのパートナーシップの下、初年度より9年連続で米国オレゴン州ポートランド市でのプログラムを行ってきている。2009年に週末を利用する半年間のプログラム「週末学校」に改変してからは、ポートランドプログラムは1週間の国外調査という位置付けにしている。2012年度は8月25日(土)より9月2日(日)まで、7泊9日の調査をポートランドで実施した。

ポートランドプログラムのテーマは、「住民主体のまちづくり」。住民自身によって問題提起され、住民自身が担うまちづくりが全米一盛んと言われるポートランドでは、文字通り「住民本位」のまちづくりが進められている。研修生は住民そのもののまちづくりへの取組みや住民と行政の関わり方を講義や現場視察などを通じて学び、最終的には日本の自治体における経験を基盤として、ポートランドで学んだ住民と行政の関わり方の違い、ならびに共通点の分析を踏まえて、住民主体のガバナンスのあり方に関して研修生それぞれの考えを確立することを目標としている。

 

国外調査の概要

ポートランドプログラムは、1週間と言う短い期間で可能な限り学びを深めるべく、現場での実践者や利害関係者との意見交換も含めた具体的な事例を切り口にして、ポートランドにおける住民参加を考えると言うアプローチを取っている。今回の事例は、①堆肥化可能ごみ収集プロジェクト、②公立高校の再編プロジェクト、③ポートランドプラン(多様性を反映した包括的戦略計画)策定プロジェクト、④ライトレール(軽量軌道:LRT)延伸に伴う新駅建設・緑化プロジェクト、の4つ。それぞれ住民と行政との対話はもとより、利害や考えが対立する住民同士の対話も多く行われている、まさに「いま」ポートランドで話題になっている事例であり、住民非常に興味深いものばかりであった。1週間のプログラムは、上記事例を中心とした市内探索、講義、現場視察・ヒアリング、およびイブニングサイトビジットで構成されている。

到着翌日の日曜日は丸一日、市内探索に充てられた。研修生は3~5名の小グループに分かれ、第4回事前研修以降、2ヶ月にわたりグループごとに計画してきたコースを、自転車や公共交通機関を利用しながら自分たちの足で回り、ポートランドと言うまちを体験した。また、ファーマーズマーケット、地域のお祭り、公園、果ては電車の中、様々な場所で出会った住民にインタビューをして、ポートランドにおけるまちづくりや住民参加の実態について聞いた。突然の声がけにも関わらず、殆どのポートランドの人たちは日本から来た自治体職員の質問に対し、真摯に丁寧に答えてくださった。研修生にとっては時差ぼけも覚めやらぬ内から一日出ずっぱりのハードな一日だったかと思われるが、素晴らしい晴天の下、休日を楽しむポートランドの人たちと共に市内探索を満喫できたようであった。

実はこの市内探索、残りのポートランドプログラムの学びを左右する、大切な一日なのである。この日、いかに「色眼鏡」(日本の常識、自分の常識に凝り固まった物の見方や考え方)をはずして、様々なことを感じとったり人々と接することができるかで、その後の学びや気付きが格段に変わるのだ。また、住民への直接インタビューはその後の個々の事例を見る上での現場感を醸成するうえで大いに役立った。

 

翌月曜日からはPSUでの講義や現場視察を開始した。まずはアメリカ、オレゴン州、ポートランド市等の行政制度や、ポートランド市の業績測定・評価について学び、火曜日以降は大学を飛び出して、上記4つの事例それぞれのアクターたちに話を聞きに出かけた。特に行政側のスピーカーと住民側のスピーカーが揃ったセッションは、双方の見解を同時に聞くことができ、非常に有意義であった。

日中のプログラムが終了した後は「イブニングサイトビジット」に出かけた。イブニングサイトビジットに限っては、上記事例に必ずしもリンクさせず、例年、ネイバーフッドアソシエーション(日本の自治会のようなもの)の集会や議会の公聴会等、実際に住民が集まり議論する現場を訪れ、住民が自分たちの地域のことを真剣に議論する様子を見学しに行っている。今年はこれに加えて「住民リーダーに会いに行く」と言うテーマが設定され、民の立場で公を担っている方々の話を聞ける貴重な時間となった。ポートランドを「全米No.1の自転車のまち」へと導いたBicycle Transportation Alliance、使用されていない駐車場のアスファルトをはがして緑地にする活動をしているDepave、自分たちが住む地域の自然公園の維持管理をするFriends of Mt.Taborなど、実に多様な住民参加の現場を体験することができた。

また、8月29日には「Waves of despair, Tides of hope. Tsunami Response and Recovery in Northeastern Japan」と題し、東日本大震災の際に現場で奮闘した研修生3名が、現場での経験から学んだことなどを、ポートランド市や近隣自治体の住民に向け発表する機会を得た。オレゴン州近辺は近いうちに大地震が起きる可能性が高いことが分かり、人々の危機意識が高まっていること、また今年6月に青森県三沢市から流出した浮き桟橋がオレゴン州沿岸に漂着し話題となっていたことなどから、参加者は100名近くにのぼった。参加者の中には、ポートランド市や近隣カウンティーの消防関係者、太平洋に面する自治体の市長や議員らも複数名おり、関心の高さが窺われた。研修生3名の発表後の質疑応答も活発に行われ、発表した3名以外の研修生たちも、会場からの質問に応じて適宜回答するべくステージに上がった。
ポートランドでのプログラム実施は9回目となるが、研修生側からポートランド側に発信する機会を得たのは初めてのことであり、非常に有意義なセッションとなった。「発信すること」から得る学びは非常に大きい。来年度以降も、研修生から発信するプログラムをPSUと共に考えていきたい。 

 

1週間の短いプログラムではあったが、毎日夜遅くまでスケジュールが詰まった内容の濃いプログラムであり、研修生にとって学びの多いものだった。住民参加の先進地とはいえ、必ずしも全員が全員、地域づくりに参加しているわけではなく、若い世代は仕事や子育てに忙しく、なかなか参加できていないこと、そして彼らの参加を増やそうと行政が試行錯誤しているところは日本と同じであった。しかし、地域づくりに直接参加していない人々を含め、ポートランドの住民が身近な公共設備を「『私たちの』公園」、「『私たちの』学校」、「『私たちの』道路」と認識し、「私たちのまちは私たちでつくる」と言う強い当事者意識を持っているところは、日本と少し異なるのかもしれない。それでは行政の役割は何かといえば、お会いしたポートランド市職員はみな、「まちづくりの主役はあくまで住民であり、行政はサポート役である」と口をそろえて言っていた。ポートランド市の進むべき方向を長期的に見据えながら、影となり日向となり、住民の合意を創り上げていく。歴史や制度の違いはあれど、日米に共通する普遍的な行政職員のあるべき姿なのではないだろうか。研修生の多くが、行政職員として自身がなすべきことを痛感し、今後の自身の果たすべき役割を深く考えたようだ。

 

 

 

研修生レポート

「市民の思いを体現する都市 ポートランド」大崎市_安部祐輝
「アメリカから、日本を考える ~building sustainable local community」別府市_池上明子
「ポートランド研修の振り返りレポート」蒲郡市_井坂和美
● 「ポートランド研修に参加して」胎内市_石山智之
● 「ポートランド研修 レポート」足利市_伊藤亮介
無題 伊那市_大槻拓美
「ポートランド研修を終えて」東大阪市_甲斐 一行
「『いい❤があれば、達成できる』ポートランドで学んだ、それぞれの『想い』」豊田市_加藤ひろみ
無題 南会津町_上島雅
「ポートランドレポート」津市_北川圭太郎
「ポートランドの自治は果たしてパーフェクトなのか?」鳥羽市_北村純一
「国外調査レポート」八戸市_清川奈津子
「ポートランドレポート」三沢市_熊野真希
「人生の転機 市職員としての生き方を学んだ8日間(ポートランドでの国外調査)」神戸市_黒子裕司
「ポートランド研修を通して起きた私の中の変化」我孫子市_小嶋敬一
「多様性を受け入れる街ポートランドから学んだこと」桜川市_近納裕政
「KEEP WEIRD ~切株の街の持続性を目指した挑戦~」藤里町_佐々木吉昭
「ポートランド国外調査を終えて」人吉市_椎葉博紀
「市民のビジョンと温もりのある合理主義」長浜市_茂森貴洋
「ポートランドレポート」奥出雲町_宍戸俊悟
「ポートランド研修で学んだこと」足立区_島田晴奈
「ポートランド研修レポート」三木市_戸田誠之
「違っていること、違わないこと」宮古市_那波昌幸
「ポートランド国外研修に関するレポート」久山町_西村勝
「国外調査レポート」滝川市_林美穂
「窓を開ける」山武市_稗田寿明
「双方向の情報提供から生まれる市民参加のまちづくり」瀬戸市_藤掛淳一
「国外調査(オレゴン州ポートランド市)で学んだこと」三田市_松尾純一
「国外調査レポート」富士市_依田利也
「アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド市視察研修レポート」草加市_渡辺慎吾