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2013年度国外調査(米国オレゴン州ポートランド)

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調査期間: 2013年8月17日(土)~25日(日)
文責: 週末学校事務局 稲垣亜希子

東京財団は2004年より自治体職員向け人材育成プログラムを実施しており、ポートランド州立大学(Portland State University:PSU)とのパートナーシップの下、初年度より10年連続でポートランド市でのプログラムを実施してきている。2009年に週末を利用する半年間の人材育成プログラム「週末学校」に一新してからは、ポートランドでのプログラムは1週間の国外調査という位置付けにしている。

 

テーマと目的

ポートランドプログラムのテーマは、「住民主体のまちづくり」。全米一、住民参加が盛んと言われるポートランドでは、住民本位のまちづくりが進められている。参加者は住民と行政の関わり方を講義や現場視察などを通じて学び、最終的には日本の自治体における経験を基盤として、ポートランドで学んだ住民と行政の関わり方の違い、ならびに共通点の分析を踏まえて、住民主体のガバナンスのあり方に関して参加者それぞれの考えを確立することを目標とする。

 

カリキュラム

ポートランドプログラムは、1週間と言う短い期間で可能な限り学びを深めるべく、具体的な事例を切り口にして、地域における実践者や様々なステイクホルダーたちとの意見交換から、ポートランドにおける住民参加を考えると言うアプローチを3年前から取っている。事例は、①ポートランドプラン(多様性を反映した包括的戦略計画)策定プロジェクト、②アーバングリーン:ライトレール(軽量軌道:LRT)延伸に伴う新駅建設プロジェクト、③インタートワイン:ネットワークで結ばれたパートナーシップと住民参加に基づいた自然保全ガバナンスの協働的実現、の3つ。いずれも現在進行形の事例であり、ポートランドの「いま」を感じることができる、興味深いものばかりであった。1週間のプログラムは、上記事例を中心とした(1)市内探索、(2)講義、現場視察・ヒアリング、(3)イブニングサイトビジット、そして(4)特別セッション(イノベーション・ラボ)で構成された。

 

(1)市内探索(City Exploration)
市内探索は、ポートランド到着翌日の日曜日を丸一日使って行われた。7月中旬に東京で実施した事前研修の際、プログラム参加者は、上記3つの事例の中から特に関心のある事例を1つ選び、同じ関心を持つもの同士3~4名ずつのグループに分かれた。彼らは事前研修から渡米までの1ヶ月間に、PSUのスタッフらと共にグループごとの探索ルートやインタビュー内容を計画、当日は自転車や公共交通機関を利用しながら自分たちの足で市内を駆け巡った。ファーマーズマーケット、地域のお祭り、公園、電車の中など、様々な場所で出会った人たちに積極的にインタビューを行い、ポートランド市民の「住民参加」に対する姿勢や考え方を探った。ポートランド到着翌日にこうした体験をすることは、その後の個々の事例を学んでいく際の現場感を醸成するうえで大いに役立つ。また、朝から晩まで体と頭を使って動き回ることは、16時間もの時差ぼけを一気に解消する一助にもなっており、そういう意味でも大切な一日となっている。

 

(2)講義、現場視察・ヒアリング
翌月曜日からはPSUでの講義や現場視察を開始した。まずはオレゴン州の行政制度や徴税制度などの最低限の基礎を学び、火曜日以降は大学を飛び出して、上記3つの事例それぞれのアクターたちに話を聞きに出かけた。
上記①ポートランドプランの事例に関しては、ポートランド市役所の都市計画・持続対策局主任プランナーのデボラ・スタイン氏に話を聞いた。ポートランドは、住民の7割以上が白人であり、他のアメリカの都市に比べて白人率が圧倒的に高いところが特徴だが、近年中南米からの移民やアフリカからの難民が増加している。また、人種、言語、宗教の違いのみならず、障害者、同性愛者などの多様なバックグランドを持つ住民にもアプローチする努力をしてきている。スタイン氏には、ポートランドプランの内容やスケジュールといった、ウェブサイトを調べれば分かることではなく、いかにして多様な住民に市政への関心を持たせ、その上で市政に巻き込む工夫をしてきたか等、苦労した点も含めて話していただけた。中でも、障害者団体の代表とのコミュニケーションがうまくいかず、話しあいを自分の方から中断してしまっている、と言う話をしてくださり、制度や習慣、文化は異なれども、行政職員としての日米共通の悩みを共有してくださったことが印象的であった。参加者の質問にも真摯に自分の言葉で答えてくださり、誰に対しても隔たりなく誠実に対応する姿勢に感心させられた。余談だが、スタイン氏はこのセッションの後、中断してしまっていた障害者団体の代表とのコミュニケーションを再開させたとのこと。参加者からの質問に答えながら、このままではいけない、との考えに至ったそうである。
その他にも、全米唯一の広域政府METROの議員、ポートランド市の職員、NPOの代表、住民グループのリーダー、大学教授など、老若男女、多様なアクターとの場が設けられており、週末学校参加者とのインタラクティブで活発な意見交換がなされた。

<参加者レポート>
● Urban Green(アーバン・グリーン)
・ 「アーバングリーンについて」萩市 椙本学
・ 「 アーバン・グリーンの事例から」赤井川村 髙松重和
・ 「講義レポート」 草加市 成田圭子
● METRO(メトロ)
・ 「国外調査:メトロ調査レポート」千葉市 久保田健太郎
・ 「メトロ」茂木町 田中のり子
・ 「Metro」 箕輪町 土岐俊
● Leadership for Resilient Communities(耐性あるコミュニティつくりのためのリーダーシップ)
・ 「耐性のあるコミュニティづくりの為のリーダーシップ(Leadership for Resilient Communities)について」横手市 佐藤良人
・ 「耐性のあるコミュニティづくりのためのリーダーシップ」村上市 富樫充
・ 「Leadership for Resilient Communities」神戸市 西原美千代
・ 「耐性あるコミュニティづくりのためのリーダーシップ」豊明市 松本小牧
● Portland Plan(ポートランド・プラン)
・ 「ポートランドプラン」春日市 大原佳瑞重
・ 「ポートランド調査講義レポート(ポートランドプラン)」春日井市 勝伸博
・ 「ポートランド・プラン~市の多様性を反映した総合的戦略計画」吉川市 城取直樹
・ 「第6回国外調査(スタイン・デボラ講師)レポート」常滑市 堂本大輔
● The Intertwine(インタートワイン)
・ 「国外調査(ポートランド)インタートワイン」 神石高原町 伊藤邦夫
・ 「インタートワイン・アライアンス」大町市 大塚裕明
・ 「インタートワイン・アライアンス-ネットワーク関係と住民参加に基づいた自然保全ガバナンスの協働的実現」豊橋市 大橋史明
・ 「インタートワインアライアンス」貝塚市 七野司

 

(3)イブニングサイトビジット
日中のプログラムが17時に終了した後も、一日はまだまだ終わらない。参加者はイブニングサイトビジット組とビアストーミング(夕食をとりながらのディスカッション)組に分かれ、小グループで出かけることになる。
「イブニングサイトビジット」とは、ネイバーフッドアソシエーション(日本の自治会のようなもの)の集会や議会の公聴会等、実際に住民が集まり議論する現場を訪れ、住民が自分たちの地域のことを真剣に考え議論する様子を見学するなど、「現場」を体験するプログラムである。今年はこれに加えて「住民リーダーに会いに行く」と言うテーマが設定され、民間の立場で公を担っているNPOの代表などの話を聞く機会を得た。ポートランドを「全米No.1の自転車のまち」へと導いたBicycle Transportation Alliance、使用されていない駐車場のアスファルトをはがして緑地にする活動をしているDepave、自分たちが住む地域の自然公園の維持管理をするFriends of Mt.Tabor Park などのリーダーに会いに行き、現場での活動の様子を見ながら話を聞いた。住民が “自分ごと”としてまちづくりに携わる様子を肌で感じることができ、実に多様な住民参加の現場を体験することができた。イブニングサイトビジットで出会う人々は、日中のプログラムのスピーカーと異なり、週末学校の主旨をほとんど知らされていなく、その分、現場の生々しい空気に触れられることがこのカリキュラムの魅力である。過去には貧困地域の住民の会合において、黒人住民が市の職員(白人)に激しく詰め寄る緊迫した現場に遭遇したこともあれば、ニワトリを庭で放し飼いにする際の隣家との塀の高さについて、市議会の公聴会において市民と議員が延々と議論する様子を見学したこともあり、ポートランドプログラムの中でも特に面白いカリキュラムの一つと言える。

<参加者レポート>
● Verde(ベルデ)
・ 「Verde(ポートランド貧困地区における地域課題の解決活動)」大町市 大塚裕明
・ 「イブニングサイトビジット:ベルデー調査レポート」千葉市 久保田健太郎
・ 「イブニングサイトビジット ヴェルデ」茂木町 田中のり子
Bicycle Transportation Alliance(BTA)
・ 「BTA bicycle transport alliance」豊橋市 大橋史明
・ 「バイシクル・トランスポーテーション・アライアンス(通称BTA)」貝塚市 七野司
・ 「第6回国外調査(サドースキー・ロブ講師)レポート」常滑市 堂本大輔
・ 「講義レポート 国外調査 サイトビジット(BTA)」草加市 成田圭子

● SWNI(Southwest Neighborhoods, Inc.)
・ 「SWNI」萩市 椙本学
・ 「Multnomah Neighborhood House」神戸市 西原美千代
・ 「イブニングサイトビジット~SWINI~」豊明市 松本小牧

● Friends of Mt.Tabor Park
「イブニングサイトビジット マウントテイバー」 神石高原町 伊藤邦夫
「国外研修 ポートランド調査」春日市 大原佳瑞重
「『フレンドオブマウントテーバー』による活動について」横手市 佐藤良人
「フレンズ・オブ・マウントテイバー」 村上市 富樫充
「Mt.Tabor」 箕輪町 土岐俊
● Depave
「第6回ポートランド調査イブニングサイトビジット『Depave』」春日井市 勝伸博
「イブニングサイトビジット -ディペイプ-」赤井川村 髙松重和
● Arts Council of Lake Oswego
「イブニングサイトビジット『壁のない画廊』レイクオスウェゴ市のアート協議会」吉川市 城取直樹

 

(4)特別セッション(イノベーション・ラボ・インターナショナル)
1週間のプログラムの折り返し点にあたる水曜日の午後、「イノベーション・ラボ」と名づけた特別セッションを行った。昨年の国外調査の際、東日本大震災の被災現場で奮闘した経験のあるプログラム参加者3名が、現場での経験から学んだことなどを、ポートランド市や近隣自治体の住民に向け発表する機会を得たわけだが、プログラム参加者が「発信すること」から得る学びが非常に大きいことが分かり、本年も同様のセッションを1週間のプログラムに加えるべく、PSUと共に考えてきたものである。
具体的には、プログラム参加者19名と、ポートランドでまちづくりに携わる多様な主体、すなわち行政職員、大学教授、非営利団体の代表、住民リーダーらが一堂に会し、地方行政が直面する普遍的な課題の革新的な解決方法を議論し模索しようというセッションである。日本人とアメリカ人が混ざったグループで、ごくシンプルなケーススタディに取り組んだ。はじめはアメリカ人の突拍子もなく聞こえる意見に目を白黒させていた日本人参加者も、それぞれのタイミングでぽろりと目からウロコが落ちる場面があったようで、日本の自治体職員に顕著な「枠にはまった」、「固定化した」ものの考え方を打ち破ることに一定程度、成功したと言えよう。帰国後のアンケートでも、このイノベーション・ラボ・インターナショナルの時間が最も印象深かったと答えた参加者が多かった。

 

ポートランドでの1週間を振り返って(参加者レポート)

このプログラムは単なる視察旅行と異なり、参加者のニーズに応えるべく作り込まれているものであり、海外でのプログラムとしては他に例のないものだと思われる。約1週間と短い期間ではあったが、夜の時間帯までもイブニングサイトビジットとビアストーミングに使う、目一杯のプログラムであった。限られた時間を可能な限り有効に使うように企画された内容の濃いプログラムであり、参加者にとって学びと気づきの多いものとなったようである。これまでに週末学校で学んできた「自治の本質」、「地域の力」と言った地方行政に携わる上での本質的なものの考え方、そして「目の前の仕事を見直す」プログラムで徹底的に考えた公務員としての仕事に臨む姿勢、それら全てを体感する機会が多くあった。日本から遠く離れた場所で、それまでの学びが一気に腹に落ちる経験は強烈で、自ら得た気付きが彼らの中から消えることはないだろう。

以下は、参加者全員の国外調査レポートです。是非お読みください。

・ 「豊かなつながりと巻き込みのまちづくり」神石高原町 伊藤邦夫
・ 「ポートランド研修を終えて」大町市 大塚裕明
・ 「ポートランド研修感想」豊橋市 大橋史明
・ 「ポートランドの風と光の中で感じたこと」春日市 大原佳瑞重
・ 「ポートランド調査全体」春日井市 勝伸博
・ 「リーダーシップと向き合う旅」千葉市 久保田健太郎
・ 「国外調査(ポートランド研修)について」横手市 佐藤良人
・ 「国外調査(ポートランド研修)より学んだ事」横手市 佐藤良人
・ 「ポートランド調査全体」吉川市 城取直樹
・ 「ポートランド調査全体について」萩市 椙本学
・ 「ポートランド研修を終えて」赤井川村 髙松重和
・ 「美味しい街は、住んでみたい街」茂木町 田中のり子
・ 「第6回国外調査全体レポート」常滑市 堂本大輔
・ 「市民を信じることが、未来を変える」箕輪町 土岐俊
・ 「ポートランドの取り組みから『原点』を見て」村上市 富樫充
・ 「ポートランド調査全体について」貝塚市 七野司
・ 「講義レポート」 草加市 成田圭子
・ 「ポートランドの樫の木の下で」神戸市 西原美千代
・ 「ポートランドが気づかせてくれた大切な感覚~国外調査レポート~」豊明市 松本小牧