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(2014年度国外調査)イブニングサイトビジット: 全米退職者協会・エルダーズインアクション・高齢化問題研究所

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調査先:全米退職者協会・エルダーズインアクション・高齢化問題研究所
調査日:2014年8月28日
文責:長野県安曇野市 花岡 慧(2014年度参加者)

AARP4

2004年に東京財団が自治体職員向け人材育成プログラムを開始して今年で11年。初めの5年と、その後6年とで、プログラムの形態と内容は異なるが、一貫して実施してきているのが、米国オレゴン州ポートランド市での調査である。今年もポートランド州立大学(Portland State University:PSU)とのパートナーシップの下、11回目となるポートランドプログラムが実施された。

7泊9日の本プログラムは、(1)市内探索、(2)講義、現場視察・ヒアリング、(3)イブニングサイトビジット、そして(4)特別セッション(イノベーション・ラボ)で構成されている。

上記(3)「イブニングサイトビジット」とは、ネイバーフッドアソシエーション(日本の自治会のようなもの)の集会や議会の公聴会等、実際に住民が集まり議論する現場を訪れ、住民が自分たちの地域のことを真剣に考え議論する様子を見学するなど、「現場」を体験するプログラムである。これに加えて「住民リーダーに会いに行く」と言うテーマが追加され、民間の立場で公を担っているNPOの代表などの話を聞く機会を得た。住民が “自分ごと”としてまちづくりに携わる様子を肌で感じることができ、実に多様な住民参加の現場を体験することができるライブ感がイブニングサイトビジットの魅力である。

以下は、イブニングサイトビジットとして訪問した全米退職者協会・エルダーズインアクション・高齢化問題研究所の訪問レポートである。

参加者レポート

●はじめに

AARP

私が、イブニングサイトビジットの参加先として、このプログラムを希望したのは、私が業務として高齢者の健康保険制度を担当しており、アメリカでの高齢者の支援制度などに興味を持ったためである。高齢化問題についての考え方の違い、日本と共通する問題、新たな気付きなど、今後の参考になる内容を得ることができればと考えて参加した。

 

●各団体について

全米退職者協会(AARP)…約60年の歴史を持つ、非営利・超党派の団体である。会員制の団体で、加入者は全米で約3,700万人(オレゴン州には50万人)。50歳以上の人々が、力を合わせて、高齢者の生活の改善に貢献することを目指している。

 

エルダーズ・イン・アクション…「行動する高齢者」の意。AAAPなどと連携して、高齢者のための政策について議員等への働きかけ、市やカウンティへの助言などをする。また、高齢化についての、教育活動などを行っている。

AARP5

高齢化問題研究所…ポートランド州立大学内にある研究組織である。高齢化問題の解決に貢献するためのプロジェクトを展開している。またその活動は、コミュニティとの連携を重視したものである。政府とコミュニティのバランスを取り、高齢者のニーズを満たすことを重視している。

●ポートランドでの取り組み

ポートランドは、WHOによる、「高齢者に優しい街づくり」のリサーチに参加した世界33都市の一つである。高齢化問題研究所のアラン氏は、2006年からエイジ・フレンドリー・シティプロジェクトに携わっている。実際に高齢者やその介護者に、「町のいいところ」「何が障害になっているか」「解決のための提言」などを、当事者に話を聞いた。そこから、実際の問題を確認し、共にプロジェクトに取り組んできたという。様々な問題にネットワークとして取り組む事を目指している。

政府がすべてに取り組む事は出来ない。その部分はコミュニティの力を活かして取り組むことの大切さを強調していた。

●社会的な孤独

米国でも、日本と同様、高齢者の孤独や生きがいづくりは、重要な問題である。その問題への取り組みの一例として、AARPのバンダナ氏は、「Woman and Woman」という女性向けのプログラムを提供している。これは、男性より長生きすることが多い、高齢女性同士が、友達のようにつながることで、孤独を解消することを狙っている。政府に対しては、一人でも暮らしていけるようなインフラ整備を求めていくような働きかけを行っている。

また、「コミュニティセッション」という取り組みでは、高齢者の方々に、実際の日々の暮らしを聞いている。ここでは、こちらから相手に対して積極的に飛び込んでいくことで、声なき声を拾い上げるという、手法であると思われる。

AARP3

また、「village to village」や「テレタウンホール」などの取り組みが紹介されたが、その目的は、孤立する高齢者につながりを提供し、孤独から救い出すことであると感じた。孤独や生きがいといった問題が、国を超えた普遍的な問題であると感じ、高齢化問題への対応はこの点に大きなウェイトがあると思った。

●年をとるということ

アラン氏は語る。年を取ることは、ネガティブな面ばかりではなく、経験・知識を活かして、社会に貢献できる。そのような考え方を、社会全体に浸透させていくこと。それが重要なのだと。

とかく、高齢化問題を語る際には、医療費や社会保障コストの増加など、マイナスの言葉ついて回るが、高齢者の持つバックグラウンドを、活かしてもらえる環境を整えれば、プラスの面が見えてくると思う。彼らのもつ知識・経験は貴重で資産であり、高齢化問題も一種の地域の“アセット”にならないだろうか?地方の高齢化問題は、すでに待ったなしであるが、このような認識を広めること、そして、高齢者をつなぎ、社会の力になってもらうためのアイデアを出し合う努力が、求められているのだと感じた。

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