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(2014年度国外調査)イブニングサイトビジット:レンツ・ネイバーフッド・アソシエーション

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調査先:レンツネイバーフッドアソシエーション
調査日2014年8月26日
文責:兵庫県豊岡市 山川正朝 (2014年度参加者)

2004年に東京財団が自治体職員向け人材育成プログラムを開始して今年で11年。初めの5年と、その後6年とで、プログラムの形態と内容は異なるが、一貫して実施してきているのが、米国オレゴン州ポートランド市での調査である。今年もポートランド州立大学(Portland State University:PSU)とのパートナーシップの下、11回目となるポートランドプログラムが実施された。

7泊9日の本プログラムは、(1)市内探索、(2)講義、現場視察・ヒアリング、(3)イブニングサイトビジット、そして(4)特別セッション(イノベーション・ラボ)で構成されている。

上記(3)「イブニングサイトビジット」とは、ネイバーフッドアソシエーション(日本の自治会のようなもの)の集会や議会の公聴会等、実際に住民が集まり議論する現場を訪れ、住民が自分たちの地域のことを真剣に考え議論する様子を見学するなど、「現場」を体験するプログラムである。これに加えて「住民リーダーに会いに行く」と言うテーマが追加され、民間の立場で公を担っているNPOの代表などの話を聞く機会を得た。住民が “自分ごと”としてまちづくりに携わる様子を肌で感じることができ、実に多様な住民参加の現場を体験することができるライブ感がイブニングサイトビジットの魅力である。

以下は、イブニングサイトビジットとして訪問したレンツ・ネイバーフッド・アソシエーションの訪問レポートである。

参加者レポート

レンツ地区にあるプロテスタントの教会が、レンツネイバーフッドのミーティングの会場である。今回はその定例のミーティングに参加させてもらった。ネイバーフッドのミーティングは、コミュニティの人々が集まりやすい場所で開催されることが常である。(プロテスタントの教会ということで、マジョリティの部類であると推測)

毎回30人程度で開催されるミーティングは強制ではなく、参加意思のある者のみで開催され、今回初めてミーティングに参加する人もいた。(今回の参加者は約15名)

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今回初めて参加した人に、なぜ今回参加したのかと尋ねると、「自分の庭にゴミが捨てられるようになり、その解決策を求めてやってきた」ということだった。自分が抱えている問題をすぐに議題にあげることが出来るこのミーティングの仕組みには非常に感心した。(日本の場合、地域の寄合というものは、半強制的な拘束力を持ち、参加の自由度は極めて低い閉鎖的なものであり、個別の問題については議題にされにくい。)

今回のテーマは、地域内の空き地に使用済みのドラッグの注射針が放置されている問題についてだった。ドラッグを地区内で使用させないためにどうすればいいかではなく、どうすれば注射針のポイ捨てがなくなるのか。注射針を安全に処理するにはどうすればいいかという点について真剣に議論がなされていた。ドラッグの使用を禁止させるという根本原因の解決ではなく、地域として自分たちが出来ることについて焦点を絞って議論していた。(針をさせるカボチャを置いておくなど、ユーモアな意見も出ていた。)

今回のミーティングには、ポートランド都市計画・持続可能性対策局のマリー氏も参加していた。研修内での話のとおり、市民の意見に耳を傾けるため、行政自らネイバーフッドのミーティングに出向いたり、要請があった場合に参加しているそうである。(今回は前者) ミーティングに参加しながら一つの大きな疑問が湧いた。この15名程度のミーティング参加者によって地域の意志が決定されているのだろうか。だとすれば、おせじにも住民の意志が自治に届いていると言えないのではないか。

この点について、会長であるジェシー氏に尋ねたところ、「このミーティングはある特定のテーマについて参加意思のある人たちの会であり、レンツ全体の意志というわけではないし、地域全体の意志を汲み取ることは不可能だ。」という言葉が返ってきた。それは、胸に引っかかっていたものが取れた瞬間だった。自治の進んでるといわれるポートランドであっても、住民全体の意見の集約というのは困難である。ただ、日本と異なるのは、自治についての意思表示や行動をきちんと行っているから住民自治が進んでいるからである。市民として意志を示すべきところ活動すべきところはする。そこに現れない少数意見を行政がきちんと吸い上げる。この関係性がきちんと出来ていることがポートランドたる所以なのである。出来ることを理解して行動する。普通のことが出来るか出来ないかで大きな差が生じるのだと感じた。

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