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(2014年度国外調査)イブニングサイトビジット:ビーバートン市多様性推進諮問委員会

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調査先:ビーバートン市多様性推進諮問委員会
2014年8月25日
文責:秋田県北秋田市 長岐 孝生(2014年度参加者)

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2004年に東京財団が自治体職員向け人材育成プログラムを開始して今年で11年。初めの5年と、その後6年とで、プログラムの形態と内容は異なるが、一貫して実施してきているのが、米国オレゴン州ポートランド市での調査である。今年もポートランド州立大学(Portland State University:PSU)とのパートナーシップの下、11回目となるポートランドプログラムが実施された。

7泊9日の本プログラムは、(1)市内探索、(2)講義、現場視察・ヒアリング、(3)イブニングサイトビジット、そして(4)特別セッション(イノベーション・ラボ)で構成されている。

上記(3)「イブニングサイトビジット」とは、ネイバーフッドアソシエーション(日本の自治会のようなもの)の集会や議会の公聴会等、実際に住民が集まり議論する現場を訪れ、住民が自分たちの地域のことを真剣に考え議論する様子を見学するなど、「現場」を体験するプログラムである。これに加えて「住民リーダーに会いに行く」と言うテーマが追加され、民間の立場で公を担っているNPOの代表などの話を聞く機会を得た。住民が “自分ごと”としてまちづくりに携わる様子を肌で感じることができ、実に多様な住民参加の現場を体験することができるライブ感がイブニングサイトビジットの魅力である。

以下は、イブニングサイトビジットとして訪問したビーバートン市多様性推進諮問委員会の訪問レポートである。

参加者レポート

●市長あいさつ

ビーバートン市の住民は統計的には4人に1人がアメリカ出身者ではない。90か国以上の言語が話されており、今年の新学期から白人がマイノリティになる。

2009年に市長に就任して、ダイバーシティーミーティングを開催したのが始まりである。多くの市民の声を聴く必要があり、どうすれば市民が参加できるかを考えて2012年に暫定的にプレスリリースの方式で募集してミーティングを開催してきた。一年で終わらないようなものを目的にやってたどり着いたのが、この諮問委員会で2014年1月に正式に発足した。

多くの市民の声を聴くことは重要であり、これを正式なものにしたいとキャンペーンで再選した。いつか自然発生的に起こり得るでしょうという声が多い中、今しかないと強く感じた。そして、いろんな多くの人を助けたいと思っているし、この委員会は非常に良いことなので情熱を注いでいる。世界がどのように動いているのかを受け入れていかなければならない。

私もこの委員会から多くを学びます。そして、学びは多くの時間を必要とします。このビーバートンの事例が皆さんの学びの助けになれば幸いです。また、このビーバートンに興味を持ってもらったことに感謝します。ありがとう!

●文化多様性推進諮問委員会(Diversity Advisory Board/DAB)

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文化多様性推進諮問委員会(以下DAB)は市長と市議会直属に配置された新しい諮問委員会で2014年1月から活動を始めている。13名の正規委員と3名の補欠委員で構成されており、委員は3年の任期で指名される。DABのミーティングは一般に公開されており、パブリックコメントも毎回受け付けている。DABの任務と目的は次の通りである。

1) ビーバートン市の“多様性・公平性・包摂性推進計画”の策定の推進
2) 少数派民族コミュニティの市民参加を向上し育成するべく、アウトリーチ戦略を市に対して助言する
3) 市主催のイベントに参加し、少数派民族のコミュニティへのアウトリーチをする
4) アウトリーチ活動の様子を随時市議会と市民に報告する

●DABの活動

DABの任務・目的は上記したとおりであるが、ミーティングは1か月に1回のペースで開催され、2時間程度である。委員は、コミュニティから選ばれたボランティアであり、仕事を持ってやっている人もいて両立させている。

多様性を受け入れ、どうすれば多くの市民がこの市に住みやすくなるのか、住んでいたいと思わせるかというプランを作っていくことに努めた。一通りのプランの下地はできたので、コミュニティに戻ってフィードバックし、まとめあげたものを市議会へ提案するつもりである。

プランの策定にあたって、多くの違う声を聴くことや政府としての役割、住民のニーズを理解することを大切にした。つまりは、多様性、公正性、包摂性を考えてきたということである。これから大切にしていかなければならないことは長期的にすべてのコミュニティを網羅して理解する政府になることであると考えている。

●委員の選定

これまでは、プレスリリースで公募して選定していたが、公正な対応をとるためにあらゆるコミュニティに出向いて、コミュニティのリーダーに「コミュニティから誰か委員として参加する人はいませんか?」と声をかけた。候補者へのニーズは非常に高く140人が推薦された。

選定にあたって、公平性を保つためにすべての人にインタビューをした。そのインタビューのなかには「自分にはないほかの基準や異文化について学ぶことはどう考えていますか?」というものもあった。

 

●それぞれの想い

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1) 市長が4人に1人は移住者であるといっていたように、学校では英語が第2外国語になりつつある。この委員会に参加しようとしたのは、市制の決定にかかわっている人は、未だにアメリカ人でありマイノリティはマイノリティに過ぎない。我々マイノリティにもニーズはあるので、決定にかかわっていきたいという想いがあったからである。自分が選ばれて非常にうれしく思っている。最初は仕事があって大変だったが、それぞれのコミュニティから選ばれた13人のメンバーと知り合えたことは貴重な体験であり大切にしていきたい。この8ヶ月を振り返るとビーバートンのニーズを調べることができたし、それを知りえることができた。そして、プランを作り上げたことに満足している。しかし、これはスタートであり、第2段階のプロセスに今いる。このプランをコミュニティにフィードバックして、どうやって実行していくのかが大切であり、チャレンジである。

2) 自分は多様性を持った社会に生まれ育ったわけではないが、このビーバートン市に住んで、それを感じているし、いい機会だと思っている。子どもが3人学校に通っているが、子どものためにもいい社会を作り出さなければならないといけないと考えている。この委員会を通して多くの意見を聞き、学び、違いを持った人と一緒に認め合いながら一緒になって、一生懸命やってきた。自分はアウトリーチの大切さを考えてきた。そして、望んでいることはこの委員会がもっと政府に対してリーダーシップを発揮できるものになってほしいということである。

3) 多様性の持つ意味は、個人個人で違う考えがあると思う。人種、老若男女の違い、これも多様性である。どこにでも存在する多様性であることから、違いを受け入れるということが大切である。人それぞれの背景があることを認め、ポジティブに考えることで意見が違っても同意することができている。変化をもたらすことは難しいことであるが、多様性を考える機会があること、そしてそれを受け入れてくれることは素晴らしく、変革の第一歩である。

●学び

1) コミュニティの定義の違い
日本でいうコミュニティは、町内会や集落単位を意味するが、ここでは、民族、宗教、市民活動の単位、サークル活動、など同じ目的・思考をもつ集団をさしていて、その大小には捉われず、友達や家族もコミュニティの範疇に入ってくる。コミュニティでの対話とは、一人の友達、近所の知り合い、家族と話し合うこと、そこから始まる。

2) DABの中の多様性
コミュニティの定義と同じく、多様性を考えるにあたって多くの視点があるが、DABが公平性 ・包摂性を求めた多様性は「民族性」に絞られている。

3) DABの選出方法の変更
これまでのプレスリリースから、あらゆるコミュニティに出向く手法に変えたわけを聞いた。「委員の公平性が保たれなくなっている」「委員の候補者がでてこない」の理由があるのかと。 これまでも十分公平性は保たれていたし、候補者も多くいた。しかし、行政は常に変わらなければならない。これまでと同じことをしていてはいけない。より良い手法はないかということで、あえて違う道を選んだ。常に変革を考え、より良い方法はないかを考えることが大切である。

4) 少数派の意見を反映させる
人種のるつぼであり、民族性という最も表面化している多様性の中の少数派の意思を反映させるという政策であるが、違う視線から多様性を見たとき、アメリカ社会に限らず日本においても経済的、身体的、立場的など多くの条件下で多様性が存在している。いかにこの表面化していない少数派の意見を吸い上げるかが、行政の役割である。

5) チャレンジ
計画を策定することが目的ではない。計画を策定したなら住民にフィードバックし、どうやって実行していくのか、それこそが最も重要なことである。

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