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(2014年度国外調査)イブニングサイトビジット:都市計画及び持続可能性対策局

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調査先:都市計画及び持続可能性対策局
2014年8月26日
文責:北海道栗山町 出南 力(2014年度参加者)

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2004年に東京財団が自治体職員向け人材育成プログラムを開始して今年で11年。初めの5年と、その後6年とで、プログラムの形態と内容は異なるが、一貫して実施してきているのが、米国オレゴン州ポートランド市での調査である。今年もポートランド州立大学(Portland State University:PSU)とのパートナーシップの下、11回目となるポートランドプログラムが実施された。

7泊9日の本プログラムは、(1)市内探索、(2)講義、現場視察・ヒアリング、(3)イブニングサイトビジット、そして(4)特別セッション(イノベーション・ラボ)で構成されている。

上記(3)「イブニングサイトビジット」とは、ネイバーフッドアソシエーション(日本の自治会のようなもの)の集会や議会の公聴会等、実際に住民が集まり議論する現場を訪れ、住民が自分たちの地域のことを真剣に考え議論する様子を見学するなど、「現場」を体験するプログラムである。これに加えて「住民リーダーに会いに行く」と言うテーマが追加され、民間の立場で公を担っているNPOの代表などの話を聞く機会を得た。住民が “自分ごと”としてまちづくりに携わる様子を肌で感じることができ、実に多様な住民参加の現場を体験することができるライブ感がイブニングサイトビジットの魅力である。

以下は、イブニングサイトビジットとして訪問した都市計画及び持続可能性対策局の訪問レポートである。

参加者レポート

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ポートランド市都市計画及び持続可能性対策局で、気候変動対策に関する方策、アクションプランの策定を担っている両氏にお話を聞いた。1993年から気候変動対策に取り組むポートランド市では、プラン策定プロセスにおける市民参加を重視し、二酸化炭素の排出削減等に国内でも先駆的に取り組んでいる。実際に、1990年レベルとの比較で約10%の二酸化炭素排出量の削減に成功しているとのことである。

現在の対策は、2009年に策定されたアクションプランに基づくものであるが、現在に至るまで変更を変えながら長期的に取り組んでいる。アームストロング氏は「二酸化炭素の削減は、交通機関、建築物、エネルギー、リサイクル、緑化など、非常に多くの要因・要素が関わっている。私たちは全体の関係を考えながら分析を進め、プランに反映させる必要がある。」というが、その個別の課題に関するプランにおいて、徹底した市民参加と合意形成を図っている。上記の全ての要因に高い関心を持つ市民がいる訳ではない。プラン全体に関する情報公開と説明責任は意識されているものの、個別の課題ごとに関心を持つステークホルダーや市民との対話を重ねる手法を重視している。例えば、交通の問題に関していて言えば、公共交通機関、自動車、自転車、ストリートカ―などの様々な交通手段があるが、その分野に関心のある人、関与している人に集まってもらい、個別のプランを作り上げている。そして個別プランを総合的に分析し、全体計画に反映させるのが彼らの役割とも言える。

そして、現在、さらにアクションプランの改定に取り組んでいるが、これまでの取り組みを経た課題が大きく3点ある。
①公平性 … 貧困層やマイノリティの人たちに良い影響(利益)が現れていない。
②消 費 … 二酸化炭素の増減は、商品を作る時だけではなく、消費する過程までに様々な形で関係してくるため、その分析と対策を講じること。
③適 応 … 実際に起こりつつある気候変動に対してどの様に準備をしていくのか。気温の上昇や洪水、地滑りなど起こりうる問題への対応を考えること

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特に①の公平性の課題に対して、市民参加の充実による解決を目指している。重要なポイントの一つは、「公正さに関する委員会」と翻訳された組織の設置で、実際に多様なコミュニティの人たちに参画してもらい、市民参加のデザインそのものを考える機会を設けている。貧困層・黒人・ヒスパニック・アジア人などと直接関わっている方々で構成され、その委員会での対話を通じて、アクションプランがそれぞれのコミュニティに、どのような影響があるかを知ることができるという。また、その委員会での対話を通じて、行政側が市民に投げかける「問いかけ」の質も変わってきたという。例えば「気温上昇にどのような対策を講じたらよいか」という問いを、「すごく暑い日はどのように過ごしていますか?」と生活者の視点に立った問いに変え、そこで得られた多様な声を分析し、プランに反映している。また、両氏を始め、担当スタッフは非公式な場面でもコミュニティのリーダー層との対話を重ねており、公式・非公式の双方のアプローチが信頼関係づくりに重要であると語る。また、一方で「かじ取り委員会」と翻訳された20~30名程度の各分野の専門家集団からなる委員会も構成しており、現行プランにおいて何が達成されたのか、何かできていないのか、継続すべきものは何か、新たなに必要な対策は何か、などあらゆる面において、市民と徹底した議論を重ねている。

クリム氏の「市民参加(委員会など)は非常に貴重なレッスンになる。」という言葉が印象的だった。気候変動対策という、専門性の高い仕事だからこそ、お役所的な仕事・言語になりがちな問題を、実際に多様なコミュニティの人たちと対話を重ねることで、人々が気にしていること、関心を持っていること、優先順位を感じていることなどを学び、それによって、どの様な対話の機会が持てるか、どの様な問いかけが必要かを学ぶことができたという。公式・非公式の様々な形で市民と対話を繰り返し、フィードバックをもらい続けながら、議会に提案する案の策定を進めている。

レクチャーの後、それぞれが専門的な知見を有するボランティア市民11名で構成される「都市計画及び持続可能性対策委員会(PSC)」の会議を傍聴させていただいた。条例によって提言機能を保障された公的な諮問機関である。そこで日本の審議会・委員会等の姿とは根本的に違う姿を目の当たりにした。審議は全て委員の主体性により運営されており、委員会が、行政側からの説明や、市民からの証言を直接聞き、相互に議論を交わしながら、結論を導き出していくのである。委員会は月2回行われており、テレビで放映され、市民が誰でも視聴できるということである。審議内容いかんよりも、まさに日本では見られない住民自治の一つの姿を目の当たりにした想いであった。短いイブニングサイト・ビジットの時間であったが、非常に強く印象に残るプログラムだった。

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