2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

(国内調査)智頭町のゼロ分のイチ村おこし運動、百人委員会などの取り組み ~鳥取県智頭町~

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調査先:鳥取県智頭町
調査日:2010年8月26日(金)~28日(日)
文責: 神奈川県藤沢市 寒河江和江(研修生)

目的
週末学校で学んだ「住民主体のまちづくり」について理解を深めるため、鳥取県智頭町および京都府京都市を訪問した。両自治体には、公募で集まった市民が身近で関心の高い課題を話し合い、課題を解決するための政策を行政に提案していく「100人委員会」がある。「100人委員会」は、自分達に必要なものは何かを真剣に話し合い、自己責任、自己決定のもとに、市民が主体となった活動を行っている。
智頭町と京都市は、人口規模や100人委員会の運営方法も異なっているが、それぞれの取り組みの長所・短所を知ることにより、本市での住民主体のまちづくりの実践に生かしていきたいと考え調査を行った。

【智頭町での調査内容】
・智頭町のゼロ分のイチ村おこし運動、百人委員会
・NPO新田むらづくり運営委員会
・森のようちえん まるたんぼう

【京都市での調査内容】
・京都市未来まちづくり100人委員会
・京都市未来まちづくり100人委員会 第11回定例会議見学
◆京都市の調査レポートは→こちらから


「智頭町のゼロ分のイチ村おこし運動、百人委員会について」
智頭町役場 企画課 大坪義道 課長補佐、西川公一郎氏
ゼロ分のイチ村おこし運動は、平成9年度に制度化され、「町の活性化は集落の活性化から」という視点で、住民一人ひとりが無(ゼロ)から有(イチ)への一歩を踏み出そうというものである。
<村おこしの概念>
①村にある種をみつけよう!(種がなければ新たな種をまこう!)
②土づくりや水やりをしよう!(誰でも参加できる雰囲気を作ろう!)
③芽が出たら大きく育てよう!(皆で協力して活動しよう!)
集落または地区の10年後の将来像(計画)を描き、振興協議会を設立し、規約を制定している。
<振興協議会規約>抜粋
①原則として全戸が年5,000円以上負担して全住民で運営していく。
②活動の柱を、ア)交流・情報、イ)住民自治、ウ)地域経営、とする。
③自らの責任によりボランティアで活動する。
行政はこの活動を支える役割として、10年間の活動費の助成、専門のアドバイザーや町職員の派遣、活動に関する情報の提供など、計画実行のためのサポートを行っている。
現在、16集落と2地区が参加しており、年度末に各集落の活動報告が発表されている。ゼロ分のイチ村おこし運動の実施により、昔ながらの縦社会のしがらみではなく、やる気のある人たちの意見が反映されるようになった。集落の全員で取り組まなければならないことから、女性の役割も増大し、地位の向上にもつながった。そして、自分達の住んでいる集落に愛着を持ち、集落での暮らしを誇りに持つようになってきた。
自分のやっている仕事の成果が目に見える、地域の中で何をしているかが分かる、一人ひとりの存在価値が大きくなるという成功体験が、住民達の活動継続の原動力となっていると感じた。

百人委員会は、平成20年度に制度化され、住民が身近で関心の高い課題を話し合い、これを解決するための政策を行政に提案していく組織である。18歳以上の町民及び町内事業所の勤務者であれば誰でも参加資格がある。平成20年度には21個の提案があり、そのうち町の事業として予算計上されたものが7事業、まちづくり交付金を活用し、平成21年度に取り組まれたものが5事業あった。自分達に必要なものは何かを真剣に話し合い、自己責任、自己決定のもとに、住民が主体となった活動を行っている。行政に陳情するだけでなく、まちの現状、課題について話し合い、自分達で行動していくしくみは、今後のまちづくりにかかせないものである。sagae_reportT1.jpg

「NPO新田むらづくり運営委員会について」
NPO新田むらづくり運営委員会 運営理事 岡田一氏
新田集落は、最盛期には24戸、100人余りが住んでいたが、現在は、16戸、50人余りとなり、高齢化率は60%を超えている。平成3年から進む過疎化対策として、「人が住み、人口が増加し、産業基盤の整備と、就労の場の創出と確保。生涯をふるさと新田で、家族みんなで幸せに暮らすこと。」を目指し、むらおこし事業に取組み、平成12年には全世帯が集まってNPO新田むらづくり運営委員会を立ち上げた。目的達成のため5年毎に総合計画を樹立し、現在第4次総合計画により事業を進めている。
<活動内容>
① 大阪いずみ市民生協との交流
② 田んぼの学校の実施
③ 喫茶・宿泊「清流の里 新田」、ロッジ「とんぼの見える家」の運営
④ 新田人形浄瑠璃の上演
⑤ 新田カルチャー講座の実施
<活動の成果>
① 都市の人達との親睦が深まり、家族ぐるみの交流も始まった。
② 村に活気と明るさが見えるようになった。
③ 全国からいろいろな人達が訪れ、宿泊、交流が始まり、村の人達の視野が広まった。
④ 人形浄瑠璃芝居の保存、伝承に大きな役割を果たすことになった。
⑤ 講座の開講により、村にいながらにして角界の名士、著名人の講演を聴くことができるようになった。
新田カルチャー講座は、平成12年6月に始まり、毎月1回、市長や町長、大学教授、国会議員、実業家、弁護士、病院長などを講師に迎え、平成22年6月までに122回実施されている。講座内容の一覧表を見せていただいたが、「地方に元気なむらを」、「アメリカの窓から日本が見える」、「情報技術と生活技術」、「水彩画を楽しみませんか」など、バラエティに富み、いずれも興味深いものであった。これだけの講座を継続してきたのは、ひとえに講師の人選、講演依頼などに奔走した担当者の努力の賜物である。sagae_reportT2.jpg

「森のようちえん まるたんぼうについて」
森のようちえん まるたんぼう 代表 西村早栄子氏
「森のようちえん まるたんぼう」は、鳥取県の林業職員である西村氏が、智頭sagae_reportT3.jpg町の豊かな森の中で子どもを育てたいという思いから、百人委員会で提案した事業である。平成21年に開園し、園舎を持たず、町内9ヶ所の森で活動している。雨の日も雪の日も、毎日森の中で元気に子ども達が遊んでいる。現在、3歳~5歳の13人の子ども達が町内外から通っている。男女1人ずついる保育士の給与は、県や町からの補助金で賄われている。
「森それぞれに雰囲気がある」、と西村氏はいう。まるたんぼうではその日の子ども達の様子に合わせ、どの森で活動するかを決めている。驚いたことに視察に訪れた森は、西村氏が所有している、通称「西村山」と呼ばれている森であった。西村氏と同じ鳥取県の林業職員である旦那さんが、道を作り、木を切り、森の手入れをしている。子ども達が森に入ることで森が豊かになり、森に入ることで子ども達の感性が豊かになるのである。
sagae_reportT4.jpg まるたんぼうでは、「早く」、「ダメ」、「危ない」、「汚い」という言葉は使われない。自然の中でどうすればいいのか、子どもは本能的に危険を察知する能力を身に付けていく。自分のことを認めてもらえることで、相手のことも認めるようになるという。まるたんぼうに入った頃には、リュックサックを背負うのがやっとだった子ども達が、今ではしっかりとした足取りで歩き、たくましい姿に成長している。
新聞やテレビなどに取り上げられたことで、全国から視察者が訪れるようになった。私たちの視察の後も、もう一つ視察の予定が入っていた。視察対応で忙しい時は、行政の人が視察者を森まで送迎するなど、全面的にサポートしてくれているという。実践する側としては、行政のサポートが何よりも心強いとのことであった。
西村氏は現在3人目の育児休業中である。まるたんぼうの活動、視察の対応、自身の子育てなど忙しい毎日を送っている。智頭町は面積の93%が森であり、「杉のまち智頭」として有名である。智頭の森に惹かれ、智頭の森の中で保育を行っている西村氏の顔は、子ども達に負けないくらいきらきらと輝いていた。

ページ2 京都市の調査レポートは →こちらから