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(国内視察)株式会社まちづくり三鷹 ~東京都三鷹市①~

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視察先:東京都三鷹市
視察日:2009年9月4日(金)
文責:沖縄県那覇市 仲本達彦(研修生)

研修生36名は、3つのグループに分かれ、地域活性化について先進的な取組みを行っている自治体を訪問しました。東京都三鷹市グループは、独創的な取り組みの多い三鷹市で都市型のまちづくりの数々を視察しました。

※ レポート②は → こちらから

 

「株式会社まちづくり三鷹」について
mitaka1.JPG 都心のベットタウンとして、古くから住宅開発が進んできた三鷹市。市内の約9割が住宅地というなかにあって、若手経営者の人材育成を行う「三鷹未来塾」を開くなど、早くから地域の産業育成に力を注いできた。その中核となる「株式会社まちづくり三鷹」は中心市街地活性化法に基づき平成11年9月7日に設立された第3セクター。アルバイトを含め3人で立ち上げた会社も10年が経過する今では、社員46名を抱えるほどに成長した。

三鷹市から派遣された5人の職員のうち、取締役事業部長でIT事業本部長でもある柴田直樹氏と同副本部長 宇山正幸氏から貴重な話を伺った。

「資本金2000万円ではじめた会社も10年後には2億7000千万円まで成長した。昨年には、IT事業本部を立ち上げた」と話す柴田取締役は、自身も、設立当初から関わった生き字引的な存在。「株式会社まちづくり三鷹」の拠点施設である「三鷹産業プラザ」は平成8年の「三鷹市産業振興計画」の主要事業として位置づけられ、平成12年(第1期)、平成15年(第2期)と段階を経て整備された。
三鷹市の地域特性をいかした企業の集積や育成を目的としており、SOHOやITを核とした都市型産業を中心に市内中小企業の活動支援と市民やNPOのコミュニティビジネスのサポートの二つの役割を担っている。財務数値が面白い。平成19年度の営業収益が8億8840万円に対し、税引前利益が1604万円、税引後は約800万円とのこと。株式会社として着実に利益を上げながらも地域にしっかりと再投資するという会社のスタンスが垣間見えた。

「みたからしさ」を追い求めて
柴田取締役は、10の歳月を振り返りながら「三鷹市は新しモノ好き」と笑った。今でこそ、三鷹市の専売特許ともいえるSOHOやITだが、古くから「情報都市としてどう生き抜くか」を座標軸に据えていた。株式会社の前身の財団法人まちづくり公社時代から、「新しモノ」を追いかけ、果敢なチャレンジを重ねてきた。例えば、(柴田さんは失敗だったと言い切ったが・・・)いち早く、当時の電電公社と行った光ファイバーの大掛かりな活用実験もそうであるし、「SOHO CITYみたか構想」の看板戦略自体もそうであった。当時、まだ耳にすることが少なかったSOHOも、米国での様子を踏まえ取り組みを急いだ結果だった。
その後に連なる独創的な取り組みも枚挙にいとまがない。国や情報通信企業とのタイアップを図りながら、実に多くの「実験」が繰り広げられた。次々と「新しモノ」を追いかけながら、その一方で、着実に地域特性に根ざした産業を生み育てていった軌跡が見て取れた。

新たな一手
SOHOの集積がすすむ現状に甘んじることはない。柴田取締役事業部長は、次の一手を披露した。「全社員からアイデアを募り、そこから何か新しいモノを生みだしていく」という。具体的な4本柱を示した。1.食と農のビジネス、2.健康ビジネス、3.環境ビジネス、4.ルビービジネス、である。
ルビービジネスについては、耳慣れない方も多いと思う。柴田さんの話によれば、日本人が開発した画期的なプログラミング言語だそうだ。日本生まれながら、世界で先行し、近年、ようやく日本でも注目されはじめたとのこと。
操作性が高く、生産効率も高いことから、爆発的なヒットが期待されると自信満々に語る柴田取締役に、またもや「新しいモノ」好きの一面がのぞいた。ルビービジネスへの手始めとして、早速、ルビー自体を指導するインストラクターの養成講座を開設した。先を見据えた戦略は着々と進行していた。

「SOHO CITYみたか」の特徴mitaka4.png
代わってマイクを握った宇山副本部長はSOHO CITYみたかの特徴として次のように語った。「今日、他の自治体でもSOHOを推進するようになってきた。これらは一般的に産業支援といった『経済の視点』が大きい。だが、三鷹の場合は、それだけにとどまらず、『まちづくりの視点』をもっている」と。
確かに、自分自身の自治体と比較するとインキュベートなどの言葉も踊り、まさに「経済の視点」である。三鷹市は、そこに「まちづくりの視点」を重ねたことは特筆に値する。
果たして、SOHOを通して人が集うことにより、そこからNPOやコミニュニティビジネスが生まれたという。さらに、予想外の出来事も。ベットタウンの宿命か、これまでは、なかなか地域との接点が無かった都市勤労者が、退職後、それぞれの専門的なスキルを活かしながら、リタイヤ組として地域での活動をはじめたとのこと。ビジネスとしては、いずれも大きくないものの、こうした人々のつながりは「まちづくり」に大きな役割を果たしていることだろう。
株式会社へ派遣される前は、市役所の情報政策課長を務めていた宇山副本部長。この分野に明るいだけでなく、同時に、現実もしっかりと見通していた。アンケートを通して、SOHOに対するニーズを分析し、早速、事業に反映させたのだ。これまでのSOHO支援の常識を覆し、ハード支援だけではなく、コンサルティングや資金調達の仲介、受付サービスの代行などソフト支援にも力を入れはじめた。
そのほか、総じて売り上げが高くなく、大きなビジネスショーへの参加機会に恵まれないSOHO事業者のために、機会の創出も怠らなかった。「SOHOフェスタ イン みたか」や「ビジネスプランコンテスト」などを開催し、出番となる舞台をしっかり演出した。かくして、三鷹市は、SOHO事業者の心をつかみ、それが更なる集積を呼び込み、幾重にも厚みを増しながら、そのブランド力を高めていった。

まちづくりの総合プロデュースカンパニーとして
SOHO CITYの三鷹市は、ここ数年来、前述のような取り組みもあり、株式会社まちづくり三鷹の管理するパイロットオフィスやSOHOセンターに加え、民間型SOHOオフィスもさらに充実してきた。表看板がしっかりと固まる一方で、まちづくりの総合プロデュースカンパニーとしての役割も忘れてはいない。
地域の産業創出・支援のほか、地域資源の活用を図りながらコミュニティ活動の支援にも力を注いだ。また、自治体のパートナーとして、数々の行政事務も受託し、ノウハウもしっかり蓄積してきた。今では、三鷹市との協働の取り組みで培ったノウハウを活用し、ちゃっかりと他の自治体向けのシステム開発や販売、コンサル業務を行うなど、その活動の幅はついに市外にまで飛び出した。
「仕事を創りながら、まちに活気をもたらす」 起業意欲が旺盛な会社に強いミッションが感じられた。

最後に
mitaka3.png 株式会社まちづくり三鷹での2時間があっという間に過ぎた。3セクとは言いながら民間感覚に満ちた会社だった。昼食を供にした柴田取締役は「研修視察を受け入れるのは、こちらから営業に行かなくても、向こうから話を聞きにきてくれるからだ。こんな便利なものはない」と語った。その言葉に触れた時、ぬるま湯につかりきった官にはない発想と脱帽した。
講義のなかでも、「チャンスはいたるところに落ちている」的な発言が随所に見受けられた。そのチャンスをしっかりと拾い上げ、チャンスとチャンスを結びつけたのが三鷹市であるとの自信がみなぎっていたようにも感じた。
余談だが、研修明けの月曜日の朝、職場に出勤して驚かされた。まちづくり三鷹のこれからの「売り」商品である「ルビー図書館システム」に個人的に大きな興味を示した筆者(近く、所属自治体で図書館システムの更新が予定されているため)に対し、早速、商品のセールス資料が郵送されていたからだ。もしかしたら顧客になるかもしれないチャンスを拾い上げようとする姿勢とスピード感にはさすがに舌を巻いた。