2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

研修生の「地元学」

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調査期間:2011年6月11日(土)~12日(日)
文責:週末学校事務局 坂野裕子

プログラムの内容

第2回で話を聞いた吉本哲郎氏の地元学の講義を受け、研修生はそれぞれの地元で「地元学」を実践した。自分の住む地域、自分が所属する自治体のこれからを考え行動するには、まずその地域の個性を知ること、そしてその意味を理解することが欠かせないことを学び、足元の“あるもの探し”を始めた。
地元学の目的は、①人が元気で、自然が元気で、経済が元気な地域をつくる。②“ないものねだり”をやめて“あるもの探し”をする。現場に出かけ、足元にあるものに驚き、住んでいる人たちに話を聞いて、人の力、地域の力を引き出し、記録する。③地域の個性を確認する。④調べたことを役立てる。である。
研修生たちは、自分でテーマを選び、地元を歩き、住民に取材をし、写真を撮って、そこに住む人々の生活や文化、歴史を探った。中には、一日中地域を歩き回った研修生や、5時間以上も1人の住民に話を聞いてきた研修生もいた。そして調べたことをまとめ、講義での発表を通じて共有した。
地元学のまとめ方はいろいろである。研修生の「地元学」はおおよそ3つのパターンに分けることができた。1つは、1人の人生について深く話を聞き、まとめる「一代記」。そして、調べたことを地図にする「絵地図」。また、スライドを使って地域について調べた内容をまとめた「地元学」もあった。

研修生の「地元学」

(クリックすると研修生それぞれの「地元学」を見ることが出来ます)

jimotogaku1.bmpjimotogaku2.bmp【ひとりの人生をまとめた「一代記」】

「今ががばい幸せよぉ。嫁に迷惑ばかけんで死にたかねぇ」(武雄市 犬塚浩之)

「海の神様」(八戸市 榊亜衣理)

「イフリサに生きて」(登別市 煤孫泰洋)

「十勝清水に生きる」(清水町 前田真)

「じいちゃんと娘たちと。」(水俣市 元村仁美)

「村医を支えたのはよそから来た嫁」(南山城村 森本健次)

「気づいたら、長老になっていた」(焼津市 山内健一)

【模造紙にまとめた「絵地図」】

jimotogaku_ishigaki_taketomi.JPGjimotogaku_hayashi_takamatsu.JPG「西表まにあ 初級編」(竹富町 石垣絵麻)

「悪ガキうんちく地元学」(宇部市 大上志麻)

「牛久沼から流れる水をたどって…」(龍ヶ崎市 岡野恵之)

「水場とともに暮らす~長野県木曽町福島青木町地区」(木曽町 小野太地)

「私が住む『生浜』は、実は『文化のまち』だった」(千葉市 金井拓也)

「地元MAP 富山市水橋地区」(富山市 佐伯哲弥)

「竜丘の人々の生活を支えてきた大井」(飯田市 菅沼美津子)

「西山町 源泉・古民家」(熱海市 高野勝博)

jimotogaku5.bmpjimotogaku_hasegawa_iwaki.JPG「海女は海女が大好き!ワクワクする!」(志摩市 仲井裕子)

「須々万地区史跡・名勝マップ」(周南市 中村成孝)

「いわき市小川町 食の文化がすごい!」(いわき市 長谷川政宣)

「歴史的街並みと仏生仏消防団」(高松市 林陽介)

「たきかわ地産地消マップ」(滝川市 前田綾子)

jimotogaku3.bmp【スライドやプリントでまとめた「地元学」】

「地元学 お水の花道」(池田町 今井秀敏)

「桜井の子どもが彩る食卓」(小田原市 岩村啓史)

「江釣子で何を食べてきたか」(北上市 大沼亮平)

「諏訪神社の秋の大祭における祭りばやしについて」(市原市 奥津保之)

jimotogaku4.bmp「銘酒『柏倉門傳』の里~西山形地区を歩いて」(山形市 後藤好邦)

「大刀洗角打ち地元学」(大刀洗町 佐々木大輔)

「四条畷市田原米について」(四条畷市 福井隆司)

吉本氏の講評

○自分の地域を自分の言葉で語ろう
自分の住む地域を自分の言葉で語れるようになろう。観光パンフレットにある言葉を引用していては、いつまでたっても地域を自分の言葉で語ることはできない。自分の足で歩き、そこに住む住民に話を聞き、そこにあるものに驚き、質問し、意味まで踏み込んで引き出すことなどを通じて、地域を自分の言葉で語ることができるようになるのだ。自分の言葉で地域を語るにはこのような訓練が必要である。観光パンフレットと同じような言葉で地域を語っていてはその地域にとって本当に大切なものは伝わらないだろう。
地域の個性を知れば、ものづくりではその地域で作られたものをより詳しく説明できるようになり、新たなものづくりのきっかけもできるだろう。地域文化はそこにあるものの付加価値を上げるのだ。また、地域を楽しむことができるようになり、訪れた人にも案内ができる。そして地域をどうしたいのか、地域で何をしていくのか、という目的が生まれ、発想がわく。その発想は、新しいことを生み出す根源となるのだ。
また、誰かに話をするときに、説明が必要な言葉を使うことはやめよう。多くの人が理解しやすく、話の内容を想像できるようにしよう。難しい言葉を使っていては伝わらないのだ。例えば「地元学」とは言わずに「○○地区に学ぶ」などと言う。調べたことをまとめたもののタイトルは、多くの人の興味をひくように一工夫もしてみよう。
「…するべきだ」という言い方はしない。「…するべきだ」は自分が動かずに他人を動かそうという言葉。この言葉を使いたくなったとしても、「…なるといいなあ」という表現にとどめておこう。

○調べるとその地域を好きになる
調べたらその調べた地域のことが好きになる。教科書に載っていない地域の物語が多くある。自分が知らないということにまず気付き、調べていこう。身近だからこそ当たり前だと考え、これまで調べてこなかったという人もいるだろう。足元には実はとても広い世界があるのだ。

○人の話を聞くことで、その人に光を当てる
ある人の人生について、じっくり話を聞くことは「人に光を当てること」である。聞かれた人にとって、自分以外の他人が、自分の生涯について話を聞きたいと言い、耳を傾け、頷くことで、目を向けられたという喜びを感じるのである。人の話を聞くことで、私たちは人に光を当てることができるのである。
話を聞く際に大切なことは、話の聞き手は、あくまで相手の話を引き出すのであり、決して教えるようなことはしない。話し手の言葉に驚き、問いかけ、引き出す。そして聞いた話はそのまま記録をする。人の話を丹念に聞いていくと、人が育つのは逆境と笑いであるということも見えてくるだろう。

○ 形を伝えるだけではいつか形骸化してしまう
研修生の感想には、「楽しかった」というものが多かったが、調査をして大切なものを知らない間に失ってしまうのではないかという危機感をもったという意見もあった。これも大切なことだ。表面にある形を調べるだけでなく、その意味まで探し見つけることが大切である。なぜなら形を伝えるだけでは、形骸化してしまうからだ。その形に込められた意味も合わせて伝えなければ本当に大切なことを見落としてしまうかもしれない。
また子どもは「未来」である。子どもを育てることは未来に生きる希望をつくることである。地域の個性、文化、歴史を子どもに伝えることは重要なことだ。それはこれからの地域の「未来」を一緒につくることにつながるからだ。

研修生の感想(調査で“驚いたこと”、“気付いたこと”を中心に研修生が感想を発表した)

・地域の高齢者に話を聞いたら、驚くほど喜んでもらえた。これほど喜んでもらった経験はしたことがなかった。
・地域の伝統や文化がこのままでは知らないうちに失われてしまうという危機感を覚えた。子どもに伝えなければならないと感じた。
・自分の地域には教科書に載っていない歴史があることを知り感動した。
・同じ時代を生きているのに祖母について何も知らないことを改めて知った。
・いかに自分が地域のことを知らないか気付いた。
・知っているつもりでも知らないことが多くあった。
・地域を知ることで、その地域に愛着がわくようになった。
・地域に飛び込む重要性を知った。
・テーマを考え、調査を通して、自分のできる地域への関わり方についてヒントを得た。

事務局所感

初めは「地元学」の意義について、やや懐疑的だった研修生たちもいた。しかし、実際に地元を歩き、住民の方々の話を聞くという「地元学」を実践することで、研修生全員がこれまで気にも留めない日常の中に新たな発見をし、地域への愛着を増して東京での研修へと戻ってきた。
「地元学」を通じて地域の中へ一歩踏み出したという経験は、これまで住民との関わり方についてわずかな不安を抱いてきた研修生にとっても、ともに歩む住民の生活を知り、住民と地域の懐の深さを感じる経験になったようだ。
研修生の中には、今後も自分なりの「地元学」を続けていきたいという者もいた。また、地域に伝わる生活文化が消えるという危機感を持ち、今後伝える活動をしたいという者もいた。また、地元に暮らす人々の生きざまから、自分たちの世代がどう暮らしていくべきか悩んだという者もいた。どの研修生も、これまで考えることがなかった地元のことや、自分のことを考える1つの大きなきっかけになったことは間違いないだろう。
「地元学」を終えた後の研修生たちの満足げな表情と成長ぶりは、事務局の想像以上だった。

関連レポート

2011年度
・ 「地元学の実践」 吉本哲郎 (レポート)
2010年度
・ 「町や村の元気をつくる地元学のすすめ」 吉本哲郎 (レポート)