2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

地域再生と社会交流欲

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講師:松本大地(株式会社商い創造研究所 代表取締役)
講義日:2010年9月4日(土)
文責: 静岡県浜松市 濱口佳乃(研修生)

 今後、地域を再生していくにあたって、街の商店街は、郊外のショッピングセンターを敵対視するのではなく、お互いに良さを発揮し共存する方法を見つけるべきではないでしょうか。例えばポートランドのダウンタウン商業と郊外のショッピングセンターでは、それぞれ使われ方、楽しみ方があります。私は、日本で魅力あふれる街なかを再生すべきだと考えています。

■失われていく商店街のアイデンティティ
 現在の日本では、郊外に大型ショッピングモールやアウトレットモールができると、一時は大変賑わっても、別の場所に新たな施設ができると、消費者は移っていきます。商店街も常に新しい生活提案やふれあい、楽しさといった日常の魅力がないと、人は訪れません。 街なかの商業も変化してきました。銀座には世界で1・2位を争う数の画廊があり、また映画や演劇を見てお食事をし、百貨店や専門店で買い物して時間を楽しむといった、落ち着いた大人の街というアイデンティティがありました。しかし、現在は低価格のカジュアルファッションの大型店などが増え、銀座らしさが薄まり街のアイデンティティを失いつつあります。地方の商店街もそこならではの店や味、風景といったアイデンティティを失わずに新しい時代の価値を付加し、魅力ある独自性をつくっていくことが大切だと思います。

■アメリカ オレゴン州ポートランドの街づくり
 ポートランドの街には街を良くする工夫やアイデアがたくさんあります。そのうちの1つは、街なかで行われている「クリーン&セーフ」という商工会議所の取組みです。「クリーン」は、主に軽犯罪で服役した人などが、街の掃除をしながら、社会復帰を目指します。「セーフ」は、元警官や警官志望の人が、街中をパトロールしながら、治安維持や街なかの案内をします。「クリーン」と「セーフ」、両方の人たちが街中で居心地の良い環境づくりに寄与し、ダウンタウンに人が集まります。また、街なかの広場や公園ではファーマーズマーケットや各種イベントが行われ、まるで人々が楽しむリビングルームのようにつくられ、街づくりに欠かせない視点がありました。

Portland 013.jpg■社会交流欲を刺激する街づくり
「商店街自体に魅力がなければ商店街が活性しない」、行政にはこの自覚が足りないのではないでしょうか。「地方だから」、「小さい街だから」、「小さい店だから」地域の活性化ができないのではなく、小さな街ならではの視点や、お客様との関係づくりによって大きな消費が生まれる可能性があります。
地域の商店街を活性させるためには、「この街でライフスタイルを築きたい」という生活者視点がカギとなるでしょう。現代の生活者はモノで満たされているため、自分のライフスタイルを満たしてくれる街や人との交流が生まれる店を求めていきます。これが自己実現欲の次にある社会交流欲です。地域の商店街は、常に消費者と近い距離にあるため、消費者の潜在ニーズを読み取り、期待を超えるモノやサービスを提供し、「顧客満足」以上の「顧客感動」を提供することができます。商店街は利便性や安さだけでない、日常の幸せ感があふれる生活文化が存在するかが重要になります。皆さんもいま一度自分の街について考えてみてください。

※左上写真:ファーマーズマーケットの様子。毎週土曜日にポートランド近郊の農家が出店する。多くの市民が集い、買い物をしたり、友人との交流を楽しむ場となっている。