2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

自治体財政の自立

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講師:福嶋浩彦(東京財団上席研究員、前我孫子市長)
講義日:2010年5月30日(金)
文責:福岡県福岡市 桑野幸一(研修生)

○なぜ地方財政の自立が必要か
自治体が事業を行うために一部でも国から補助金をもらえば、自治体は国の補助基準どおりに仕事をし、国に対して説明責任を果たすことになります。 本来、自治体は市民の意思に基づき仕事をし、市民に対して説明責任を果たさなければならないはずです。国から地方に対する国庫補助負担金を原則として全てなくしていく必要があります。市民自治の実現のためには、地方財政の自立が必要です。

○「三位一体改革」の真の継続を
小泉政権時に推し進められた「三位一体改革」。このベースとなった考え方は、①国から地方に対する国庫補助負担金を“廃止”し、②国から地方への徹底した税源移譲を行い、③税源偏在を是正するため地方交付税改革を行う、この三つを同時に行うことにより、地方財政を自立させるというものでした。当時、私を含めた改革派の首長のネットワークは「地方財政自立改革」と言い換えて、その推進を政府に提言しました。
しかしながら、政府が実際に行った「三位一体改革」は、国の補助負担率の“引き下げ”による国庫補助負担金約4兆円の削減と、約3兆円の税源移譲、改革なき地方交付税の額の大幅削減というものでした。特に国庫補助負担金の削減の仕方に問題がありました。補助負担率の“引き下げ”でなく“廃止”で補助負担金の数を減らさなければ、そのまま国の規制や関与が残り、自治体の自由度を高めるものとはなりません。結局、「三位一体改革」は、地方財政の自立を進めるものとはならず、地方財政の危機だけを進行させる結果になりました。あらためて、本来の「地方財政自立改革」を現実のものとしなければなりません。

○問われる自治体の覚悟
地方財政の自立を進める前提として、自治体が自らの責任と判断で自治を行うのだという自立の精神を持つことが絶対に必要です。地方分権が進めば、それだけで地方が豊かになるわけではありません。地方分権とは、地方が豊かになるかどうかの責任を地方が負うことを意味するのです。
2年程前に前政権(自民党政権)下で道路特定財源の一般財源化が議論された時、ほとんど全ての自治体の首長と議長は、国土交通省に対して道路特定財源堅持の要望書を出しました。これはとてもおかしな話です。なぜ、紐付き(特定財源)ではない、自らの責任と判断で自由に使えるお金(一般財源化)を要求しなかったのでしょうか。自分の責任で決めるのを嫌っているように見えます。
また、2000年の地方分権一括法の施行により、自治体は法解釈の自治権を持つことになりましたが、どれだけの自治体がそれをきちんと認識して活用しているでしょうか。同時に、国から自治体に対する通達は廃止されて強制力を持たない通知に変わり、それ以前の通達も遡って強制力を失いました。自治体は市民のために、従来の国の解釈に捉われず、本当に正しいと判断する法解釈を行い、運用していく責任があります。
現政権(民主党政権)は地域主権を掲げ、より分権的な政策を推し進めようとしています。しかし、自治体は10年前に行われている地方分権政策にさえ追いついていないというのが現状ではないでしょうか。地方分権は、自治体が「お金をくれ」と言うことではなく、「私が責任を持ちたい」と言うことです。自治体に責任を負う覚悟が本当にあるのかどうか、そこが問われています。

 


 

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