2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

自治体職員のための地方財政

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講師:松本武洋(和光市長)
講義日:2010年5月28日(金)
文責: 滋賀県東近江市 青木幸市(研修生)

私は市長として、自治体運営を経営という視点で捉えてきました。経営とは理想と現実とがありますが、そのギャップを埋めていく作業です。そのためにはまず現実を理解しなければなりません。現実を知るためには、自治体の財政状況を知ることが有効です。職員のみなさんも、これからご紹介する数字を見るための各種ツールを有効活用し、自治体の全体像を把握しながら、役所のあるべき姿をイメージするようにしてください。

○数字の捉え方
自治体財政の分析をする際に意識しなければならないことがあります。①数字は比較して初めて生きてきます。常に類似団体など他市と比較するようにしてください。自分の自治体の常識にとらわれず、常に他市と比較し、疑問に思ったことから、わがまちの強みと弱み、そして特徴に気づくことになります。②一方で数字は全てを語りません。数字として現れない部分を判断する力が必要となります。③会計情報は過去のものです。財務諸表等からは「今」を知ることはできないことに注意してください。

○財政比較分析表

類似団体との比較に用いるのに「財政比較分析表」があります。類似団体の平均と比べ、視覚的にチャートの形で自治体の特徴を捉えることができます。チャートの形には様々なパターンがありますので、比較することによって何が違い、どこが特徴なのかが見え、改善点を判断する材料となります。さらに、分析欄の改善内容や決算カードを合わせて見ることで、より深く分析することも可能です。
【財政力指数】 団体の基礎体力であり、近年は数字が上昇するよう調整されています。
【経常収支比率】 社会資本を投資する段階では指数は低く、社会が成熟していく中で指数が高くなることに留意する必要があります。
【実質公債比率】 借入額が多くても、返済期間が長ければ指数が低くなるので、操作可能な数字である点に注意が必要です。
財政比較分析表(平成20年度_和光市)

○歳出比較分析表
自治体の歳出の状況について、指数を比較することができるのが「歳出比較分析表」です。
【経常収支比率の分析】 
指数の高低のみで判断するのではなく、指数の平均との差が自治体の特徴なのか、それとも改善すべきものなのかを判断しなければなりません。例えば、福祉を重点政策としているため扶助費が高い、委託を増やして市役所をスリムすることで人件費は低いが物件費は高い、といったことが見えてきます。
【人件費分析】 
性質別の人件費だけでなく、物件費に含まれる賃金や、補助費に含まれる繰出金の人件費相当分を含めた実質的な人件費を見ることができるのが特徴です。
【公債費分析・普通建設事業分析】 
実質公債費率と普通建設事業を関連づけ、時系列で見ることで、将来の負担について検討することができます。

歳出比較分析表(平成20年度_和光市)

○決算カード
もっとも重要視すべきは、年度の純粋な支出である実質単年度収支の数字です。企業の経営者にとっては1年間の経営成績に当たり、実質単年度収支の赤字が続けば、企業は倒産します。役所であっても赤字が続く状態は問題であるという認識が必要です。
また、決算の実情を把握するためには、「類似団体比較カード」を利用し、目的別や性質別から比較を行なうことも有効な手段です。1つ1つの項目を類似団体と比較し、異なる理由を考え特徴を捉えます。これが経営的な視点からは最も重要なことです。
決算カード(平成20年度_和光市)
類似団体比較カード(平成20年度_和光市)

以上の主要な指標をより深く分析するためには、長期的な検証が必要です。経年の変化を知ることによって、まちがどう変化したのか長期のトレンドが見えてきます。