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官民パートナーシップ

キーワード:

講師:根本祐二 (東洋大学経済学部 教授)
講義日:2010年6月11日(金)
文責: 福岡県北九州市 池田志穂(研修生)

nemoto2_edit.jpg【PPPの概念】
PPP(Public Private Partnership)は、世界共通の一般的な言葉で、日本では「公民連携」と訳します。民間と同様に、官と民の間も契約に基づいて事業を行うということがPPPの基本的な概念です。したがって、PPPの定義には「契約」、「リスク」、「リワード」といった言葉が入っています。
PPPの活用には、誰がリスクを負うのか、リスクに見合ったリターンがとれているのかというリスクとリターンの設計、口約束ではなく、契約によるガバナンス、この2つの原則が用いられています。単に「公共事業だから」、「完全民営化だから」正しいということは言えません。市民全体にとって一番必要なことを、ケース・バイ・ケースに考えるというのがパートナーシップの基本であり、世界的に認知されている一般的な考え方です。

【今、なぜPPPなのか】
「大きな政府」と「小さな政府」という概念があります。「大きな政府」とは、高い税金を徴収し、政府の支出を通して国民の幸せを実現するという考え方で、「大きな政府」で「大きな公共」を実現しようとするものですが、これは財政破綻を生み出しました。その後出てきたのが、支出をできるだけ切り詰め、政府の支出ではなく市場における自由競争を通じて国民の幸せを実現する「小さな政府」、「小さな公共」という考え方です。しかし、これも公共サービスの質の低下など、各所に歪みが出て、国民・住民は不満を持ちます。必要なのは、支出を減らしながら機能は守る「豊かな公共」です。PPPには、「豊かな公共」と「小さな政府」、この2つの間のギャップを埋め、つないでいく役割があります。

【PPPのトライアングル】ペストフトライアングル.JPG
スウェーデンの政治学者ペストフが、社会福祉サービスの担い手について分類、分析をした図を応用して、「PPPのトライアングル」という図をつくりました。 ※右図はクリックで拡大
トライアングルには「地域」、「市場」、「政府」の3つのセクターがあり、公共サービスの担い手は政府だけではないことを表しています。3つの補助線によって、政府と非政府、営利と非営利、公式と非公式に区分されますが、区分された真中に出てくる三角形が、3つのセクターのどこにも属さない、非政府、非営利かつ公式に活動できるセクター(アソシエーション)、すなわち「新しい公共」です。地域が非公式のハードルを越え、市場が非営利のハードルを越え、政府が非政府のハードルを越え、この部分をできるだけ埋めていく作業が必要ではないでしょうか。

【PPPの類型】
PPPには、公共サービス型、公共資産活用型、規制・誘導型の3つの類型があります。
公共サービスを民間が担う公共サービス型には、PFIや指定管理制度が属します。具体的には、刑務所を官と民で運営する山口県美祢市の社会復帰促進センターの事例があります。
公共資産活用型は、使用が継続していなく維持費だけがかかる負の財産となった公共施設を民間の事業者に活用してもらうものです。例えば新潟県南魚沼市は、市町村合併で使わなくなった議場をヤマト運輸のコールセンターとして誘致・活用し、賃料と雇用機会を生みました。 
nemoto1_edit.jpg 最後に、行政が法整備を行ったり、出資や補助金などを出したりして企業誘致・観光振興を図る規制・誘致型があります。昭和30年代の町へ回帰させ、観光客ゼロから20万人以上を呼べるようになった「昭和の町」、大分県豊後高田市はその一例です。私(根本氏)が属していた日本政策投資銀行はPPPの概念にもとづき、民間企業の経営者をトップにおいたタウンマネージメント機関(TMO:Town Management Organization,)に対して投資を行いました。TMOがリスクを負って施設管理や観光振興を行っています。

「新しい公共」については、人によって理解が異なり、曖昧かつ無責任に議論されることが多くあります。一番犯しやすい間違いは、財政難を理由に公共的なことを企業やNPO、住民にやってもらうということで自治体の責任を果たしたつもりになってしまうことです。「公共」の担い手は、もともと地域でした。それに市場が加わりどうしても市場で供給されないもののために政府が成立しました。「公共」は、古代人類が発生した瞬間から様々なパートナーシップによって支えられてきたものです。「新しい公共」やPPPの議論を通じて「公共」について今一度考え、自分の仕事と向き合うことで、今までとは違う世界が見えてくるはずです。