2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

市場化テスト、指定管理者制度の課題と推進戦略の見直し

キーワード:

講師:菊地端夫(明治大学経営学部公共経営学科 専任講師)
講義日:2010年6月12日(土)
文責: 香川県坂出市 新池誠(研修生)

kikuchi1.JPG 1.自治体行政の“民間化”の考え方、推移
行政サービスの多くは「目に見えない負担感の無い」「受益と負担が一致していない」サービスであり、むしろ受益と負担は逆累進的と言えます。行政は、自ら提供しているサービスの価値とその特性を理解して、市民に理解を求める必要性があります。
民間化は一般に「官から民へ」という言葉が使われますが、実際にはサービスの供給責任は官が持ちつつ、提供においては民間のノウハウを官が取り込んでおり、むしろ「(ノウハウを)民から官へ」と言ったほうが説明しやすいでしょう。また、単純な官か民かという分類だけでなく、公有解除、事業特権の付与、補助金、バウチャー、市場化テスト、外部委託など、サービスの供給責任の内容と度合いにより、多様な手法が存在しており、「民間化」は幅広い意味を持っています。
今後、行政は、直接の供給者から条件整備やバイヤー等の役割に変化していく一方、サービスの実施を民間に委ねた場合においても、サービスの提供そのものに重い責任を持つことになります。

2.指定管理者、市場化テストの概要と課題
指定管理者制度は、2009年4月現在70,022施設と導入施設数は伸びています。指定管理者選定の第2ラウンドが終わり、直営への転換、公募性の導入、指定の取消、管理代行制度への移行など、見直し事例が増えており、民間企業の撤退事例もあります。民間企業は、参入する自由と同時に撤退する自由もあると考えていますので、行政は撤退時の対応をマネジメントする必要があります。また、新公会計制度により公の施設も資産として把握され、資産の所有コストが明確になるので、施設の売却や譲渡などの資産を圧縮する流れが生じます。指定管理者である受託者は、利用者以外にも施設の持つ意味や価値を説明しないと、施設そのものが廃止されてしまう事も予想されます。
市場化テストは、官と民が対等な立場で競争し価格と質の両面で優れた者がサービスを担う制度です。官と民の責任範囲を事前に決定しないため、官か民かという出口の無い守備範囲の二元論を克服する可能性があります。アメリカ連邦政府では、対象となった行政組織も改革案を持って入札に参加し、89%を官が落札しており、市場化テストは、民間開放だけでなく、官に改革のインセンティブを与える目的も持っています。

kikuchi2.JPG 3.財政難、職員削減下における企業、NPOとの連携
受益者である市民が受託者選定に関与していない事から、入札評価、モニタリング、事後評価、廃止論議に市民の関与が重要になってきます。また、入札時のプロポーザルだけでなく、事業のボトルネックの解消やBPR提案などに民の創意工夫の活用が求められます。
官と民が対等に競争することが市場化テストの趣旨であり、官に創意工夫の裁量を与えないと、競争を受けて立つというインセンティブが無く、サービス向上の機会を自ら切ってしまう事となります。市場化テストに参加する官は、民間と同等であり、民間やNPOとアライアンスを組んで入札することも可能であります。
企業とNPO、NPO同士、官と企業、官とNPOなど様々な協働により、本当の意味での官民連携が築かれます。こうした官民連携により提供される新しい公共サービスが、旧来の行政サービスを凌駕して初めて、「新しい公共」が創られるのではないでしょうか。