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全国に広がる地方議会改革 ~住民・行政・議会、三者の関係から見えてくるもの~

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講師:中尾修(東京財団研究員、元栗山町議会事務局長)
講義日:2013年5月19日(日)
文責:愛知県豊明市 松本 小牧(2013年度参加者)

本講義の目的

地方議会は自治体の条例や予算を決定する機関、すなわち地方自治体の「意思決定機関」である。その性格上、行政のチェック機関としての役割を持ち、とかく個別最適に陥りがちな行政を正すべく、二元代表制の一翼を担っている。しかし現実は本来あるべき姿からはほど遠く、住民のみならず、長(行政)や議会までもが議会の役割を正しく理解しているとは言いがたい。多くの自治体で議会そのものが機能していないのが現状ではないだろうか。

本講義では、北海道栗山町の議会事務局長として全国初の議会基本条例の制定に尽力した中尾修氏を講師に迎え、二元代表制における地方議会のあるべき姿と現状の問題点を整理する。同時に、住民と行政と議会のそれぞれの関係性、それぞれの役割を再確認することで、行政職員の依って立つところを明確にしたい。

講義内容

私は8年間議会事務局長として、法律が求める2元代表制、つまり執行側のすべての案件に対して、議会というかたまりとして是々非々で臨むということを貫き通した。その結果、執行機関以上に議会が強いということを全国に示すこととなった。町長と議会の感情的な対立はあったが、それでも議会としては冷静、沈着に、本当に是々非々で対応するよう、事務局長として議会改革のプロデュースをしたと考えている。議会のみなさんが活躍できるステージを作り、台本を書き、演出をしたということである。これからの議会事務局に求められるのは、議会の総体の取組に、このプロデュース力を発揮することだ。

●市民参加により地方議会改革

今の地方制度調査会の委員の共通認識は、いかなる議会改革をすすすめても、今の自己完結型の議員像では、議会は変わらないのではないかというものである。私も、それは否定はしない。第1に女性が少ないし、若い人も少ない。また事業主が多い。しかし、今すぐ議員の顔ぶれが変わるわけではない。それで市民参加が重要になってくるのである。

●二元代表制

二元代表制という言葉は首長も議員も直接選挙で選ばれる。つまり、市民は2つの意思決定機関を同時に作ってしまうということである。そしてその二つの意思は成立当初から微妙なずれが生じている。この制度設計こそが、2元代表制の根幹である。一方は独任制、一方は多人数の合議体としての特徴を持っており、一方の機関に大きな力を与えていない。執行には行政という行為、議会には決定という行為を担う。しかしながら、これまで議会は、議会らしい仕事はしなくなっており、名誉職になってしまっていた。これは、住民にも責任があり、住民は投票すればそれであとはまかせっきりになっていた。議員は権威になっており、住民は無関心であり、そのような中に議会があった。しかしながら、それがマイナス成長になった社会の中で成立しなくなってきたのである。これからの時代、議会は現在の行政サービスを削減するような、住民にとってマイナスとなる議案の決定をしなければならない。そのためには、議会全体として財政状況や行政の取組を把握していなければ、健全な決定はできない。

●住民との直接対話~議会報告会の意義

みなさんのまちの市長は市政報告会をやっているだろうか。では、議会は議会報告会はやっているだろうか。2元代表制は機関競争であるため、市長は意思決定プロセスの中にしっかりと市民参加を入れ、議会も意思決定の中に市民参加を入れる、そうすることが民主主義である。

●議会改革の目的は

自治体改革、議会改革の目的は、市民自治、住民自治がどう進むか、そこに住んでいる市民が参加する意欲をもっていただけるかということに主眼があるべきである。よって行政に都合のよいことばかり言ってくれるような市民を集めるだけの市民参加をするべきではない。意見はバラバラでいい。人の意見を聞きながら、自分の意見と見比べて、これは我慢しなければならないなとか、まち全体としてみたときに、自分の要求の正当性が強いのか弱いのかということを見比べることができる場に、たくさんの人に参加してもらう。多様な民意とは、今たとえば子育て中、介護中、または収入を確保しなければならないからそんな暇ないという地を這うように生きている人々の想いはなかなか伝わらないが、そのような市民の参加こそがとても重要である、ここの確保ができるかが、今行政や議会に求められていることである。また、議会報告会をやると、痛烈な議会批判や行政批判が出てくる。それで、少し工夫して子育て中のお母さんを対象にした報告会とか、就活中の学生との懇談会とか、介護でお困りの世帯との意見交換とか、課題別、地域別にやらないとなかなか難しいかもしれない。 みなさんの議会では、一般会計の審議には時間がかかるが、特別会計になると一気に終わるということはないだろうか。議員は自分の票につながらないから特別会計にはあまり関心がない。しかし非正規雇用の問題、介護の問題など社会の縮図は特別会計に埋まっている。今一番お困りで、一番弱いところに照射できるような議会でないと、その存在意義そのものが疑われるのではないか。

●名古屋の例をどう読むか

名古屋市の河村市長が提案する市民税10%減税については、もう狭い議会の中で議論するのではなく、減税はどういう影響があるかについて市民に直接説明する必要があるのではないかと名古屋市会に申し上げた。その結果、名古屋市会は市内5か所で議会報告会を開いたが、その時には、河村市長の人気に議会は押し込まれており、もうすでに流れが決まってしまっていた。それで、議会は健全なうちに、市民と双方向の話し合いの機会を作っておかないと、議会が議案を否決したり、重要な局面に立たされたときに説明責任を果たそうとしてもできない。常にその回路の確保が重要であるといえる。

●個人技から集団技へ

議会活動といっているほとんどは、実際は議員活動、個人技である。つまり自分を選んでくれた市民の想いを、執行側に伝え予算化されることに終始しているのが実態である。スポーツでいえば、ゴルフのようなものである。本来の議会は、討議というパスを回してゴールを目指すサッカーのようなものであるべきだ。合議体として、ひとつのかたまりとして仕事をするのが議会の姿であるはずだ。そのような理念が議会基本条例として集約されてきている。

●栗山町における議会基本条例

2006年栗山町で議会基本条例を制定した。地方自治法内には、自治基本条例も議会基本条例も一度も出てこない。条例の制定の根拠は、憲法における制定権である。しかし国は、法令の範囲を超えた条例を制定したのではないかという危惧をしたため、栗山町にどういう条例を制定したのかという照会の電話がかかってきた。それは、いち職員である自分にとって大変なプレッシャーだった。しかし、それから4年たって第29次地方制度調査会の中で、議会基本条例に期待すると認知された。情報公開条例にしても、議会基本条例にしても、国に先んじて小規模自治体から生まれてくる。ぜひ地方から国を変えていってほしい。

●さいごに

みなさんは、情報の優位性を武器としていないか。自分の立場では言えない、自分の立場ではできないというのが役所の常套句であるが、それは、それは役所組織の中で自分の立場の擁護に走っていないか。自分の考えを持って組織の改善にあたってほしい。