2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

住民自治と自治体改革

キーワード:

講師:片山健也(北海道ニセコ町長)
講義日:2015年5月16日(土) 14:45-17:15
文責:北海道登別市 近間聡史(2015年度参加者)

◆講義のねらい

地方自治の本質は「住民自治」にあるとされる。まちづくりは「住民とともに」行うべき、と多くの人が口にする。では、住民自治とは何だろうか。そもそもなぜ必要なのだろうか。 片山氏は、戦後右肩上がりの経済成長の中で、行政は地域の相互扶助の力を奪ってしまったと主張する。そして、行政が担ってきた仕事を“解体”して、本来やるべき主体に返し、次の社会に引き渡していく仕組みを作ることが、これからの行政の役割だと言う。では、それを達成するために何が必要なのだろうか。 ニセコ町では、徹底的に「情報共有」と「住民参加」にこだわり、実践を積み重ね、住民自治を鍛え続けている。職員は、住民の日々の暮らし・意思・価値観を町の政策に反映させ、その熟度を高めるべく、日々住民とのやりとりの中にいる。日本初の自治基本条例である「まちづくり基本条例」があるから、住民自治の盛んなまちになったわけではないのである。 かつては職員として組織の疲弊と戦い、今は町長として住民自治にこだわり続ける片山氏に、住民自治のあり方を聞き、住民自治のまちにおける行政の仕事を考える機会としたい。

 

◆講義内容

_MG_4682・政策形成過程に市民の参画を得るため、また、市民参画の基本となる市民の意識を養うためにも、行政による情報公開が重要だ。ニセコ町では、情報公開は当然のことで、あえて情報公開条例を制定する必要はないと考えていたが、条例で公開の原則や手続きを定めないということは、公開の質を個々の職員に委ねることとなり、その結果、職員によって情報公開のレベルが異なるという問題があった。また、条例が制定されていない状況下では、時の首長の考えによって情報公開の質が左右される可能性もあるとの判断から、情報公開条例を制定し、内部会議の公開や政策意思形成過程の共有化などを定めることとした。ニセコ町においては、あらゆる会議は公開されており、予算編成についても、編成過程のパブリックコメントを行うだけではなく、首長や財政部局等によるヒアリングも含めてすべて公開している。

 ・ニセコ町まちづくり基本条例は、まちづくりの理念や原則、制度を新たに定めたものではなく、それまでのニセコ町の行政運営における市民参画の実践を、まちづくりの憲法として条例化したものである。実際に、まちづくり基本条例が首長の恣意的な行動を止めたケースがあった。ニセコ町では、毎年度、その年度の予算をわかりやすく冊子としてまとめ、すべての世帯に配布しているが、予算削減の観点から、時の首長が冊子の作成を中止しようとしたが、条例に規定された情報共有の原則を根拠にそうはならなかった。また、条例で、特別職は、就任時にまちづくり基本条例の理念実現のために職務を執行することを宣誓する旨が定められており、首長が条例に反して行政を執行することの抑止となっている。

 ・コミュニティの基本は市民の相互扶助であり、経済発展等の過程において、自治体がこの相互扶助機能を代替してきたに過ぎない。よって、行政が実施する事業は、対価を条件に提供される「サービス」ではなく、住民は相互扶助の代替機能を持つ自治体に税金を納めているに過ぎない。top_katayama-san今後は、経済成長の過程で、自治体が代替してきた(奪ってきた)相互扶助的機能を市民に返していかなければならない。一方で、行政は、効率性のみを追求し、行政の領域を縮小することのみに傾注してはならない。何よりも質の向上に主眼を置くべきである。

 ・行政の専門性を高めるためには、現在の任用制度におさまるのではなく、より流動性を高める必要があるのではないか。今後、任用制度のあり方について提起していきたい。

  ・町長就任時から、ライフワークのひとつとして環境施策に取り組みたいと考えていたところであり、2011年に水環境保全に関する二条例を制定した。規制で自然を守ることによって、環境の保全が保証されることから、企業進出や移住者が増えると考える。

◆参加者所見

・当市においては、予算編成過程の公開はまったく行われていない。予算編成の過程では、一部有力者の働きかけにより予算化を余儀なくされる案件が多々あり、限られた財源を予算配分するにあたっても、そうした非公式の圧力に左右されることが多くあるのが実情である。そうした意味で、予算編成過程を公開すること、特に、首長や財政部局によるヒアリングを公開することについては、行政の大きな決意が必要であり、特に首長がすべての勢力から自由でなければならない。市民の税金を基にするという点、また、事業実施の裏付けになるという点において、特に予算編成こそ、市民の意思に基づくこと、そして情報公開が必要であるということをあらためて考えたところであり、予算編成過程の徹底した公開こそが、市民自治のキーになるのではとの感触を得た。

・行政サービスのアウトソーシングは社会的な趨勢となっている。しかし、地方の小規模自治体においては、行政サービスを民間に委託(委譲)するにあたっても、良質な提供主体を確保できない状況があり、サービスの質を考えれば、必ずしも、民間委託(委譲)が最善策でないことが多々ある。
片山町長は、「行政が効率性のみを追求して良いのか」とおっしゃったが、民間プレイヤーが不足する我々地方の小規模自治体は特に、効率性のみを追求してアウトソーシングを進めることがあってはならないのではないか、時には勇気をもってサービスを守らなければならないのではないかと考えた。ちかまさん

 ・片山町長は、任用形態の流動性を高めるための提起を行っていきたいとおっしゃっていた。当市の任用形態は、正職員と臨時職員、嘱託職員を中心とする非常勤職員が中心であり、内部にいる者としても硬直化している印象がある。しかし、行政の各分野では、プロパー職員が有しない高度な専門性を求められるケースもあることから、東京財団の政策提言「専門人材の恒常的な確保による地域再生~地域再生仕事人の活用~」で示唆されているように、任用形態の流動性
を高めることにより、プロパー職員に欠ける専門性を高める取り組みが必要なのではと感じた。また、市民自治を高めるためには、より市民の立場に近い人間を行政内部に配置することが有効であり、時々の行政課題に応じて、期限付職員等の手法を活用しながら任用形態の流動性を高めることで、より市民感覚に近く且つ時々の課題に精通した人間を採用することができるのではと考えた。

・環境保全関連条例の制定については、まさにニセコ町の特性を踏まえた施策の方向性であり、単に環境を保全するだけではなく、経済的にも町の価値を高めることにつながっているところが素晴らしいと感じた。

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