2016年度のプログラムが終了しました(更新日:2016年12月21日)

「地元学」

キーワード:

講師:吉本 哲郎(地元学ネットワーク主宰、鹿児島大学生涯学習教育研究センター リサーチアドバイザー)、横尾 ともみ(地元学ネットワーク)
日時:各研修生による地元での個別実施、2015年6月7日(日)、6月26日(金)
参加者レポート:千葉県大網白里市 高山育男(2015年度参加者)

◆講義のねらい

まちづくりに取り組むとなったら、あなたならまず何をするだろうか。
よそのまちの成功事例を取り入れてみたが、数年後になぜかうまくいかなくなった、という話はよく耳にする。現地視察をし、予算も労力も費やし、万全の態勢で取り組んでも、失敗に終わってしまうのはなぜだろうか。
地元学は、まちの元気を作っていくために、「ここ」に学ぶことからスタートする。事例集もコンサルタントの分析もいらない。自分たちで地域を歩き回り、「ここ」にあるものを探していく。人と交わり、多くの気付きを重ね、行動を繰り返すことで、地域が持つ力・住んでいる人々の力を引き出していく。そして、これまでの枠を飛び越え、自由に発想し、自分たちで創る力を身につけ、新しい価値を生み出していく。
第2回の講義後には、それぞれの地元で地元学を実践する。地域に入り込み、住民の話を聞きだし、足元にあるものに気付くために必要なのは、どのような姿勢だろうか。実践を通じて、感じ、考えてほしい。

◆参加者レポート

1)講義のねらい

  • 地元学はまちの元気をつくっていくために、自分達で地域を歩き回り「ここ」にあるものを探す
  • 人と交わり、多くの付き合いを重ね、行動を繰り返し、地域が持つ力、住んでいる人の力を引き出す
  • これまでの枠を飛び越え、自由に発想し、自分達でつくる力を身につけ、新しい価値を生み出す
  • 住民の話を聞き出し、足元にあるものに気づくために必要なものは、どういう姿勢かを知る
  • 第2回で学んだ「地元学」を地域で実践する
  • あるもの探しをし、地域の潜在力を見出す

 

2)講義内容

地域が豊かになって、人が元気になっていくためには、地元から学んでいく姿勢が必要だということを学んだ。

 ①印象に残ったもの吉本さん

  • 自治は訓練だ
  • 地域社会を読む力、勇気をもって発言する力が大切だ
  • 発言したからには責任をもち行動する
  • これは訓練だ、油断したら元に戻る
  • 地元にあるものを探し、わかりやすく、見えなかったことを見えるようにする
  • 3現主義(現場・現実・現物)
  • 逃げるな、正面から向き合え
  • 正しいことには気をつけろ
  • 下心で付き合え
  • 遊ぶ日を決めてから仕事しろ
  • 地域の力・人の持っている力を引き出せ
  • 楽しんで自治と向き合う感覚がないと、絶えず追い求める姿勢が自然体でできない
  • 冗談もユーモアも、直感的に感じそれを表現する力が大切

  ②概要

  • 地元学は学問ではない。学問の専門家を育てるのではなく、地元に学ぶということ
  • 「ひとが元気になる」「自然が元気になる」「経済が元気になる」
  • 協働と自給自足が弱くなっている
  • 人材を育てるとは言え、自分がやるしかない
  • 学校の先生に文句をいってもしかたない
  • 自分で自学して自習して、困った問題を創造的に解決する
  • あなた方は困った問題を創造的に解決することは無理だ。「なぜなら、まじめ、遊ばなない、冗談を言わない」からだ
  • クリエイティブになれ。冗談が言えるようでないと切り抜けられない
  • 冷蔵庫の中の余りモノで、黙ってうまいものをつくるのが超一流の調理人
  • ないものねだりをやめて、あるもの探しをする
  • 水俣では、まちが良くならないとか、誰が悪いとか、先輩の悪口とか市役所の悪口がひどかった。夜中の嫌がらせ電話もふくめて。そこで、ないものねだりをやめてあるものを探すことにした
  • 新しいものをつくらないと衰退する。新しいものは、あるものの新しい組み合わせ。20160607-3
  • ないものを組み合わせても、ないものはない
  • 「調べる」「考える」「役立てる」を繰り返す
  • 公務員は、役立てるために仕事をしている。だが、公務員は調べていない。大学の調査のように調べていく
  • 地元を歩くとき、その人の友達が3人いるかを調べる。つながりを知る169
  • 住民は、お金と効率だけではない豊かさを知っている
  • 成果を出すには時間がかかる(人が育つのには時間がかかる)
  • 外に出かけ、見聞を広げ、学ぶ
  • 問題解決型ではなく、創造的に解決する当事者となれ
  • 楽天的であれ
  • 笑いを大切にしろ「人が育つのは、逆境と笑い」
  • わかりやすい言葉をつかう
  • 誰が、何を、どのようにを明らかにする

「どのように」「誰が」「何を」で良い

  • 仲間をつくる
  • 地球の暮らしを楽しむことを真ん中にする
  • 未来をつくる意志やビジョンが不可欠
  • 人は感動で動く
  • 人は水と緑と火に集まる(煙突、かまど、お風呂など、・・・そのまちに煙突があるかないか)
  • 正しいとかを中心に置いていては、誰も動かない
  • 何々すべきとかは使ってはならない
  • 答えは足元にある(村の有用植物を調べるには、たったの1軒を調べればある程度わかる/50歳になるまで、自分でも知らないことがたくさんある/小さいと思っていたが、大きな世界がそこにはある)
  • 大きな話をする人は嘘が多い
  • 具体的に考えていかないといけない横尾さん
  • 水俣病問題を探し、共存していく

  「問題が問題だった」

   →まず問題づくりに取り組む

    水俣病患者の家族に学んだ

    食べ物からなったものは食べ物から治す

    家族がいるから死なずに済んだ

   →水俣は環境から改善すると考えたら

    a)海のもの

    b)山のもの

     これがつながれば、なんとかなる

     海と山のつながりが大きかった

  • 水俣では、結婚できない、就職できない、偏見にさらされた40年がある
  • 水俣の名前では、農産物も売れないなど世間から嫌な目に合い続けていた

 →世間は変えられない 自分が変わる

 →人の口には戸を立てられない 「あきらめろ」

 →世間に頼りすぎず、自分が変わろうとすることが大切だ

  • 自治の訓練をやった

  あるものさがし

  水の行方を調べた 生活の一番身近なもの

  環境という抽象的なものではなく、水を具体的に調べた

    ★母親が、環境という言葉を使っていないこと

    ★毎日使っている皆の共通の環境とは、「水」だった

  河川の流入状況を見たら、「川の木」のようだった

  • 地域を調べてみた20160626-4

  知っているつもりが、よく知らなかった

  調べた人しか詳しくわからなかった

  調べたところが好きになっていった

  (子供たちにも調べてもらいたいと思えるものにつなげる)

  • 水俣病の家族と火祭りを実施した

   お金がないからやれないではなく

   金がなくてもできる

   ゼロ予算でも、結果的に予算以外のことをやっていった

   クリエイティブになるには、予算ゼロからやったほうがいい

  • ごみの行方

  ゴミを減らすやり方

  ごみ減量女性連絡会議

  男は行動が遅い(正しいか、100点かを議論していて動かない)

  女性は好きか嫌いで動く

  • 環境マイスター(23人)

  売れなかった水俣の商品だが、すぐれたものを作って売った

  • 環境モデル都市に選ばれた

胸を張って水俣市の出身であることを言えるようになった

  • 5分以上話さない

  プラスの話を5分

  あとは、マイナスの話をしろ

  ただし「実害はありません」「イヤになったら辞めればいい」を添える

  • 個性を把握すれば奇跡が起こる20150607-1

アイデンティティ閉鎖症にならないこと

   →自分のまちのことを説明できること

   →訓練する

   →国際交流・・・交流と言って、行って終わりではない

 地元を学んで話せるようになること

  • 自由発想・・・弱い
  • 慎重計画・・・ずさん
  • 大胆行動・・・ぶれる
  • クリエイティブになれ
  • 遊べ、冗談(ユーモア)を言え
  • 自由に発想できる会議がそもそも存在しない
  • 教育という言語は、教えるというよりは、引き出すこと
  • 些細なもののおすそわけ20160626-3

    美味いしい

    楽しい、うれしい

    好きな場所、自分の時間、自分の人生

  • 一代記=聞き書き(どんなことをやりたいか)

   <チェックポイント>

    ・世間話から入る

    ・目的は明確に伝える

    ・アルバムを見て作成する

    ・ノートをとっていく(相手次第)

    ・相手の人生に寄り添う

  できれば、年表を作成する

  左手に時代、右手に思い出

  ノートなら、テープレコーダーをつかわない

  左にキーワード 右に内容

  地図、アルバムの写真を取り入れる

  できあがってから、印象的な言葉で「タイトル」を入れる

  小見出しを入れる

  最初と最後に文章を入れる

  できあがったら相手に見てもらう

  • 絵地図

  「わかりやすくする」「見えなかったことを見えるようにする」20150607-2

  表現や深みが広がる

  子供がやることはやらされたものではない

  同じ絵地図でも表現が異なる

  • おいしかった食べ物

  懐かしかった食べ物はなんですか?

  貧しかった時代もある

  おいしかったものに「懐かしかった」ということばを付け加えた

  「みんなで食べてみようか」ということにつながる

  「懐かしい食べ物」

  • 好きな場所

  「写真をとる」「見せていく」

   どうする? 残す? 守る?

  • うれしかったこと

  子供のうれしい、大人のうれしい

  文集として小学校でも使用できる

  • これまで大事にしてきたこと

  一番やりたかったこと

  「思想、哲学、美学」

   ※思想、哲学、美学のないまちづくりをやっている

  • 大事にしたいこと(命、畑…)

   ※津波にあって復興が遠のく

   ※困ったときに、戻ること、これまで大事にしてきたこと

   ※出発点にもどる

   ※それが無いと地域がばらける

   ※復興計画には、命や地域や家族などはどこにも出てこない

  • 地域の説明やイメージ

  たった1軒でもつくろうと思えばつくれる

  まず、人の話を聞くことから始める

 

事例1:「川南町における地元学の活かし方」 講師:河野英樹氏(宮崎県川南町議会事務局局長補佐)

川南町の良いイメージをつくることで、モノ・ヒトが増えることにつなげていこうと取り組む流れが、地域の中で根付いているという事例。河野さん

  • 川南町の良いイメージをつくることで、モノ・ヒトが増えることにつなげていこうと取り組んでいる
  • 川南町の良いイメージを一つひとつ増やしていく
  • 川南町認定農業者協議会で地域を元気にするために、ないものねだりではなく、あるもの探しをする
  • 川掃除から始めた活動が川南町の「四季を食べる会」を発足させた

 (トロントロン軽トラ市の開催、浜うどんの誕生もある)

  • みんなが取り組むためにはわかりやすくすることが大切
  • 自由に発想すること・慎重に計画すること・大胆に実行することが大切
  • 行政が地域と一緒にやらせてもらう、行政が地域に参加していくという考えが大切

 

地元学の実践及び発表

 【絵地図作成と発表】

絵地図を作成するにあたって、今後取り組みたい防災の観点を念頭にした。

慎重に計画することと言われていたが、とにかく地元に出ることからはじめることとした。ただ、大網白里市では丘陵部・平野部・沿岸部で災害の様態が異なる地域性があり、地元学を今後の防災行政に活かしたいと思ったため、丘陵部の一部の現状から把握することを試みた。

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把握にあたっては、地元の人から聞くことにした。子供の頃の話などを聞き取っていくうちに、農業用ため池の小中池ができた過去の状況を知ることが大切だと指摘された。ただ、地域の人も皆が知っているわけではなく、小中地区で最年長のお年寄りくらいだということだった。

早速会いに行くと、立ち話ではあったが沢山の話を聞くことができた。視力が相当落ちてしまい、私の顔も十分には分からない様子だったが、楽しそうに話してくれた。夜中に電話もいただき、他にも小中池の歴史を知る人、資料のある場所などを教えてくれた。

翌日に、資料を確認するため、地元の元町会議員を訪ねた。資料をひととおり見た後、石碑の詳細を把握するため郷土史研究会の古山豊会長を訪ね、膨大な情報を得た。資料や過去の状況を知り、更に当時の詳細な写真を手に入れるため、小中川土地改良区や図書室へ足を運んだ。20160626-1

資料は全て図書室のある職員のところにあった。大網白里100年の歴史を作成する際に集めたまま返却していなかったとのことで、多少時間の無駄はあったが、一か所で全てを見ることができた。

図書室の職員からは、防災上参考となる地質学の資料を紹介してもらい、千葉県の生い立ちや小中池周辺の丘陵部がどのように形成されたかを知ることができた。

狭い地域のことを確認していくうちに、市域全域、近隣自治体、県域に関係する内容に広がっていき、専門性が高くなった。

ただ、絵地図にまとめる段階では、相当に苦慮した。発表当日の持ち時間を考えると、伝えたいことばかりを書き出すわけにもいかない。そのため、歴史を辿って行くうちに出会った昭和八年の「千葉県大網鳥瞰図」を参考に小中池周辺を描くこととし、今の小中池の状況を伝え、調べていった過程等は、口頭で説明するだけにとどめることとした。

発表当日、吉本先生や横尾先生へ資料の確認をお願いしたところ「調べたことが書かれていない」との指摘を受けた。時間は無かったが、逃げずに全力で資料の追加を試みた。

発表時間内では全部は伝えられなかったが、地元に入り、人と出会い、情報をもらい、調べ、防災行政に活かせる情報を手にすることができたことを伝え、だから「小中池からはじめる地元学」なのだと説明できたことは大変うれしかった。

 

 【一代記】

週末学校の面接時に、「地元で尊敬する人はだれか?」と問われ、「大里綜合管理株式会社の野老真理子社長」と咄嗟に答えた理由を明確にするため、一代記を申し入れた。

本来は直接質問をしながら、表情や様子を見る必要はあるのだろうが、インタビューの効率を上げるため、自分の想いを記した手紙に加えて質問項目を送付した。

手紙の想いは社長に届き、想像以上にインタビューの時間を提供してくれたし、沢山のことを話してくれた。

野老社長は、自然や人から得られる恵みをしっかりと受け止め、自分のできる範囲で、その恵みを人々へ還元している。決してすべての人に還元できるわけではないが、地域コミュニティが継続して維持できる範囲で還元している。

そこには、自分たちの地域の公共は、自分達で守り、自分達でにぎわいを持たせようとするコミュニティがあり、その考えに賛同する者が集まっている。

宗教的だとか、政治的だとか、特に行政内部の人間は悪く言うが、そもそも、市民の想いから自治を形成するのであれば、まさしくその姿がここにはある。当然、足を踏み入れ、考えが合わずに出て行く者も居るだろうが、今でもそれが継続できている理由がここにはあった。

本市の、足元には、地元学を学び、地域の想いを一つひとつ解決しようと全力で走り続ける人物がいたことを改めて知ることとなった。

聞き取った内容を丁寧につなぎ合わせ、野老社長らしい話し言葉になるように置き換える作業はとても難しかったが、野老社長の言葉を思い起こさせるような書き方が少しでもできていればいいなと思った。

提出した一代記は、吉本先生や横尾先生の修正を経て、一代記らしさがさらに増したように感じた。冒頭に私が記した煽るような記述が消されていたことは、今考えればよかったとは思った。

横尾先生が指摘されているとおり、「傾聴すること、人の心に踏み込むこと」を実践していきたいと感じた。

 

【ひとりの人生をまとめた「一代記」】  (クリックすると研修生の「一代記」を見ることが出来ます)

楽しくなくちゃ、家族も喰えないだろう (群馬県高崎市 荒木征二)

“今”を強く明るく生きる飯塚さん~修善寺温泉とともに~ (静岡県伊豆市 杉山暁彦)

 

3)参加者所見高山さん2

「地元を歩き、傾聴すること。人の心に踏み込むこと。役立てるために調べること。そして、結論を先に持ってくること」というのは、「訓練し続ける」ことが大切だと学んだ。

実践してみて、資料収集にしても、もっと沢山の時間が欲しいと感じたし、もっと別の地域もまわりたい、もっといろいろな人から話を聞きたい、早くしないと高齢者が亡くなってしまうなど、様々な想いが膨らんだ。

図書室の資料の活用も進め、今後の自分の仕事に活かしたい。

関連レポート

2014年度
「地元学」吉本哲郎、横尾ともみ(レポート)

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2013年度国内調査~熊本県水俣市~(レポート)
・国内調査 「頭石(かぐめいし)村丸ごと生活博物館」勝目豊、山口和敏(レポート)
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「あるもの探しで地域を元気に:川南地元学」河野英樹(レポート)

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「地元学の実践」吉本哲郎、横尾ともみ(レポート)
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